TOP > rkrn > 忘却

1


十歳になった私は彼との約束通り、忍術学園へ入学した。表向きの志望理由は「行儀見習いと護身の術を身に付けるため。」けれど両親は別の目的のほうが大きいと思っている。名前は本当に小平太君が好きだねぇ、と微笑ましげに送り出してくれた。

私の心境なんて知られたくないからそれで良い。でも彼に入学したことを知らされては気まずいと思ったので、何度も釘をさしていた。


「本当に内緒だからね!あっちの親にもごまかしといてよ!!」

「はいはい。卒業して一人前になるまでは秘密、なんでしょ?」


どうやら娘の恋路を見守っているつもりらしい。嘘をつくのは心苦しいけど、もし彼に会ってしまったら自分が冷静でいられるか解らない。それを防ぐためにはこれくらい仕方ないと腹を括った。


「やっぱりまだ、完全には消しきれてないんだな。」


別に恋をしていたわけではないけれど。お互いに大切な友なのだと信じていたから、彼にとってはそうじゃないという事は、私の心に重くのしかかって。


「忘れなきゃ、立ち上がれない…。」







その日、私は忍術学園の大きな門を叩いた。



(もう、どんな顔して会えばいいのかわからないんだ)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -