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それぞれが帳簿の計算に入る中、名前にも会計委員会特製の算盤と帳簿が渡され、団蔵の隣に腰を下ろす。委員長が厳しい為、ろくに会話をすることも無くそれぞれの帳簿にとりかかるのが、人見知りの名前にとっては有り難い。

なるべく上級生組を見ないようにして黙々と作業を続けていると、疑問点が出てきて団蔵に声をかける。今名前が見ている帳簿は団蔵が記帳したものだ。


「ここって二十でいいんだよね?一千じゃなくて。」

「あ、はい!…すみません、僕字が下手で。」


申し訳なさそうに俯く団蔵に、慌ててそんなつもりじゃないと否定する。確かに団蔵の字はちょっと自由奔放なところがあるが、責めるつもりは全く無いのだ。なんとか団蔵を宥めて再び机に向かうと視線を感じ、顔を上げれば自分を見ている左吉と目があった。


「あっ!の、」

「?」


躊躇いがあるのか一度下に目線を逸らしたが、少しして再び名前を見据えた左吉が言った事は、自分がやっている帳簿の数字も見てほしいという事だった。どうやら今左吉が計算している帳簿も団蔵の記帳したものらしく、彼の字には毎回苦労させられているらしい。


「なんだよそれ、いやみか?」

「へー、あほのは組でもいやみは通じるのか。」

「なんだと!?」

「え、ちょっ、二人ともどうしたの!?」


突然険悪な空気を醸し出した左吉と団蔵。一年い組とは組の仲が悪いのは忍たまなら誰でも知っている事だから他の会計委員は平然としているが、そんな事知らない名前は驚いて一人おろおろしている。

二人の言い争いが段々盛り上がってくれば、もう委員長も黙っていない。潮江が静かに立ち上がると同時に三木ヱ門も素早く立ち上がり、潮江が構えるよりも先に名前の腕を掴み引き寄せる。雷のような怒声が響いたのは、それとほぼ同時の事だった。


「いい加減にしないかこのバカタレ共っ!!」


勢いよく落とされた拳骨でようやく静まった二人は涙目で潮江に謝り倒す。三木ヱ門はこれを予測して二人の近くにいた名前が巻き込まれないように行動したようだ。未だに掴まれている腕を見て、名前は顔を上げた。


「あの、有難う田村君。」

「えっ?」


名前の顔を見たままぼうっとしていた三木ヱ門は、彼女に名前を呼ばれて意識を戻す。その瞬間、彼女の腕を掴んだ自分の手が目に入り、慌ててその手を離した。


「すすすすまない!」


自分がした事を思い返して今更羞恥に染まる三木ヱ門は名前を見ていられなくなり、顔を背ける。すると視線を感じて後ろを振り返る。


「な・なんだよ、左門!」

「いや、別に。」


三木ヱ門をじっと見ていた左門は特に何も言わなかったが、それが逆に三木ヱ門の不安を掻き立て、彼を食い下がらせる。左門もそれに応戦するものだから、こっちでも火の粉が上がるかと思われたが、それも潮江の喝によって防がれた。

結局、団蔵が記帳した帳簿は解読できる名前が担当する事になり、再び算盤を弾く音が聞こえ始めた。

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