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学園中の穴という穴を手分けして埋め続ければ段々とその範囲は狭まっていく。離れた場所を埋めに行っていた食満と作兵衛が各自担当の場所を終え、名前と一年生が居る場所まで戻って来た。

名前達が担当する場所は落とし穴の数が一番多い場所で担当の人数も多めに割り振られていたのだが、その構成が四年生とはいえ女である名前一人に、一年生が三人となれば手が回らないのも当然だ。それが解っていたので、食満も作兵衛も急いで各自の分を終わらせ、四人を手伝いにやってきた。


「お、思ったより進んでるな。」


残っている穴を一瞥した食満に褒められ、一年生達は嬉しそうに笑顔を浮かべて駆け寄るが、名前は食満に一礼をしただけですぐに作業を再開させる。それが真面目な娘と映った食満は感心し、一年生達にも同様に再開するよう声をかける。再び散り散りになった用具委員会は、お互いが見渡せる範囲内で一人一穴ずつ埋めていく。





夢中になって作業をしていると周囲が見えなくなる事はよくある。食満と作兵衛に話しかけられないように黙々と作業をしていた名前は、すぐ隣で誰かが作業をしている事に気付かなかった。


「あの、名字先輩。」

「うひゃあっ!?」


不意打ちで声をかけられ驚いた名前は、肩を跳ね上げ奇声を発してしまった。しかし驚いたのは名前だけでなく、声をかけてきた相手も目を大きく見開いて固まっていた。


「あ…ご・ごめんなさい。びっくりしちゃって…え、と…富松、君…?」


恐る恐る相手の名前を呼べば正解だったらしく、気を取り直した作兵衛は名前に気にしないように言うと、彼女の顔をじっと見つめた。その視線に耐えきれず俯いた名前は、やっぱり三年生もぎりぎり苦手かもしれない、と考えていた。

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