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自分に向かって倒れ込んできた伊作を避けようと数馬が身を捩り、その反対側に重心を傾けたのがいけなかった。


「きゃあっ!?」


そう、数馬が避けた反対隣には名前が座っている。伊作を背負った数馬は名前に覆いかぶさるように倒れ込み、名前は三段重ねの一番下になってしまったのだ。


「名字先輩っ!」

「落ち着け乱太郎!まずは伊作先輩から退けないと。二人共手伝ってくれ!」

「「は、はいっ!!」」


一番上で包帯が絡まって動けない伊作は六年生で、左近一人の力では退かす事が難しい。他に無事だった乱太郎と伏木蔵の手も借りて、三人で何とか伊作を退かせた時、医務室の戸が開かれた。


「失礼します。三之助が委員会で怪我をしたので診て頂きたいのですが。」


保健委員会は不運の集まりだと言われているがまさにその通りで、この程度のハプニングなど軽いものだった。いつもは苦労して煎じたばかりの薬をひっくり返して駄目にしてしまったり、休憩の為に煎れたお茶を頭から被ってしまったりなどしているものだから、今回はこれだけで済んでよかったと誰もが思っていたのだ。しかしむしろ不運な目に合うのはこれからで、今回の受難は数馬だった。


「あ、数馬がくのたまを襲ってる。」

「…………はっ!下にいるのは名前ではないか!三反田貴様ぁっ!!」


医務室に入るなり飛び込んできた光景は、前のやりとりを知らない二人からすれば誤解をしても仕方のないものだろう。級友の数馬が(不可抗力だが)女の子を押し倒している場面を見ても平然としている三之助に対し、彼を連れて来た滝夜叉丸は思考が追いついた後、わなわなと震えて数馬に飛び掛かる。成績優秀な上級生に後輩の数馬が敵うはずもなく、滝夜叉丸に突き飛ばされた彼は目を回して倒れてしまった。


「わああ!」

「三反田先輩っ!?」

「大丈夫ですかぁっ!?」

「早く手当てしないと…ってあああ!また絡まった!!」


大混乱に陥っている保健委員会など見向きもせず、騒ぎを大きくした滝夜叉丸は勘違いをしたまま、名前を抱き起こして無事を確認している。医務室に来た目的である三之助の治療すら、頭から抜け落ちていた彼を説得するのに結構な時間を費やすはめになったのは、やはり不運委員会といったところだろう。

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