2
そして竹谷との約束の日、名前は緊張の面持ちで待ち合わせ場所に来ていた…おまけを連れて。
「名前!こっちこっち…って、団蔵?金吾?」
「「竹谷せんぱいおはようございまーす!」」
確か誘ったのは名前だけのはず、と首を傾げる竹谷を、名前が申し訳なさそうに見上げる。
「あの、すみません。途中でこの子達に会って今日甘味屋に行く事を話したら、」
「竹谷せんぱい、僕たちもご一緒させてください!」
「あそこの甘味屋、前から行ってみたかったんです!」
にこにこと嬉しそうにお願いする一年生相手に断る事などできない。もとより、迷惑に思っていなかった竹谷は二つ返事でそれを了承した。
「作戦うまくいってよかったな。」
「うん。それにしても名字せんぱいが人見知りだったなんて驚いたよな。」
「だから久々知せんぱいと会った時おびえてたって言ってたんだ。」
竹谷から少し離れた所で、小声になる団蔵と金吾。実は名前が二人と偶然会ったというのは嘘で、これは滝夜叉丸の作戦だった。
「お前達二人に頼みたい事がある。」
「滝夜叉丸せんぱいが?」
「僕たちに頼みたいこと?」
「いちいち嫌そうな顔をするな!…全く。お前達、名前が人見知りだという事は知っているか?」
「えっ!?」
「名字せんぱいが?」
驚いて自分を見る二人に名前は苦笑する。
「年下は割と平気なんだけどね。同級生以上…もしかしたら三年生も、男の人は特に苦手なの。」
「そうだったんですか…」
そして滝夜叉丸が名前がいかに人見知りか、今まで見てきた事を話せば名前は恥ずかしそうに俯いて綾部の後ろに隠れてしまった。
「…と、いうわけだ。お前達、名前の人見知りっぷりは理解したな?」
「まあ、相当人見知りだという事は理解できました。」
「特に同級生以上の忍たまが苦手だとも。」
「うむ。それで十分だ。で、問題はここからなんだが。」
更に滝夜叉丸は竹谷との件を話し、今の状況を説明する。
「そこでだ。お前達に頼みたいのは、偶然会った名前にこの件を聞いて、自分達も行きた〜い!と名前に着いて来たというふりをして、上手い事名前を助けてやってくれないか。私達が行けば図々しいと思われるが、一年生のお前達ならばきっと竹谷先輩も笑って許してくれるだろう。」
「ええ〜」
「笑って許してくれるかな?」
「お前達…名前を見捨てるというのか?」
二人がちら、と名前の方を伺えば、綾部の後ろから少しだけ見えた目元が潤んでいた。その顔に何かを決意した二人は声を揃えて返事をする。
「「行きます!」」
「そうか!いや〜助かったよ。あ、甘味代は私が出してやるから、竹谷先輩が奢れないと言っても着いて行くんだぞ。」
「それにしても、あの滝夜叉丸せんぱいが俺達の甘味代を出してまで頼み込むなんて。」
「名字せんぱい、相当好かれてるよね。」
「……なあ金吾、滝夜叉丸せんぱいってさ、名字せんぱいのこと…」
「しまった!名字せんぱいを竹谷せんぱいと二人っきりにさせちゃった。あ、団蔵今何か言った?」
「いや何でもないよ。名字せんぱいが泣いちゃう前に早く行こう!」
「?うん、そうだね。」