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「名字せんぱい。」

「え。」


学園に戻るなり名前を呼ばれ、振り返れば見知らぬ一年生が立っていた。


「お前は一年は組の、」

「笹山兵太夫です。」

「笹山、君?私に何か用なの?」

「はい。僕、団蔵と虎若と金吾に名字せんぱいのこと聞いて、一度お会いしてみたいと思ってたんです。」


嬉しい事を言ってくれるが、しかし団蔵達は自分の事をどんな風に話しているのだろう。初対面の一年生がわざわざ会いに来るなんて、変な噂でも流れているんじゃないかと勘繰りながら、恐る恐る聞いてみる。


「私に?三人とも一体どんな話をしてたの?」

「はい。くのたまなのに優しくて可愛いせんぱいだって。」

「か・かわ!?」

「おい笹山「そういうわけで田村せんぱい、名字せんぱいお借りしますね。」

「あ、ああ…」

「それじゃあ行きましょう名字せんぱい。」

「え?ちょ、笹山君!?」


直球な褒め言葉に顔を赤らめる名前と三木ヱ門に口を挟む隙も与えずに、名前の腕を掴んだ兵太夫はそのまま彼女を連れて走り去ってしまった。







「田村三木ヱ門せんぱーーい!」

「……はっ、団蔵?」


嵐の様に去っていった後輩達に暫し呆然としていた三木ヱ門を、遠くから呼ぶ声があった。よく知ったその声は同じ委員会の後輩のもので、こちらへ向かって疾走して来る。


「はあっ、田村せんぱい、合同実習は終わったんですか?」

「ああ。今帰ってきたところだが、何をそんなに慌ててるんだ?」

「じゃあ、あのっ!くのたま四年生の名字名前せんぱい知りませんか?」


思わぬところで、会ってから思考の大部分を占めていた少女の名前が出てきた事に驚きながらも、しっかりと答える。


「お前名字さんと知り合いだったのか?彼女なら実習でパートナーだったからさっきまで一緒だったんだが。」

「本当ですか!今はどこに行ってるんですか?」

「お前のとこの笹山兵太夫が来て連れていったが。」

「ええっ大変だ!ど、どこに行ったかわかりますか!?」


二人が去った方を指差せばお礼もそこそこに、団蔵も同じ方向に走り去っていった。

「何だったんだ一体。」

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