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午前の授業終了の鐘が鳴り、教室から色とりどりの制服が流れ出す。それは一年は組も例外ではなく、担任の土井半助の終了の合図とともに、水色に井桁模様の制服を着た子供達が教室から飛び出した。
「団蔵、虎若。」
そんな中、名前を呼ばれた少年二人が振り向くと、回りにいたは組の他の生徒も、下級生の教室前では珍しい先輩の姿に、ちらりと振り返った。
「「久々知兵助せんぱい。」」
先程会った先輩が何の用だろう、と久々知に駆け寄る二人。
「団蔵、虎若。お前たち、焔硝倉に行った時くのたまに会わなかったか?」
その言葉に焔硝倉で見たくのたまの先輩の姿を思い出した虎若。
「あ!会いました。」
「あの人がどうかしたんですか?」
団蔵も同じくのたまに思い当たり、不思議そうに久々知を見上げる。
「さっき別れたあと焔硝倉に行ったら彼女がいたんだが、お前たちが置いていった火薬壷も片付けてくれていたんだよ。」
「ええっ!?」
「あのくのたまが!?」
思いもよらない事実を突き付けられて驚く団蔵と虎若に、久々知は苦笑しながら二人を諭す。
「こらこら、片付けてくれたのにそんな言い方するんじゃない。それにあの子は、忍たまに悪戯してくる他のくのたまみたいな感じじゃなかったぞ。」
「そうなんですか?」
くのたまといえば、ほとんどが普段から忍たまに悪戯を仕掛けてくるのだが、その悪戯がなかなかエグい内容だったりするものだから、大抵の忍たまはくのたまが苦手なのだ。
だからこそ団蔵と虎若も名前を見た時から警戒していたし、今の久々知による彼女の説明には、まさか、という思いがあった。
「うん。大人しくて、私が話し掛けたら恐がっていたぐらいだからな。」
更にそう続ける先輩が嘘をついているはずもなく、それは本当だということで、それに二人は驚きを隠せない。
「そんな女の子らしいくのたまがいたなんて・・・」
「信じられない・・・」
「信じられないかどうかは自分達で確かめてみるといいさ。あの子を見かけたらちゃんと礼を言っておくんだぞ。」
用事はそれだけだ、と残し久々知は去っていった。
「・・・焔硝倉であんなに恐がっちゃって悪かったかなあ。」
「でも年下の僕たちにはどうかわからないよ。」
「そうかもしれないけどでもお礼はちゃんと言わないと。とりあえず食堂行こうか、虎若。」
「そうだね。」
既に誰もいなくなった廊下を二人は早足で後にした。