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「びっくりしたー。」
「まさかくの一教室の先輩がいたなんて。」
焔硝倉を出た団蔵と虎若は教室へと急ぎながらも、今あった出来事について話していた。
「何もされなくてよかったあ〜!」
「ほんとほんと。ヒヤヒヤしたよ!」
そのまま二人が校庭を抜けようとする時、青紫を身に纏った少年とすれ違った。
「あ、五年生の久々知兵助先輩!」
団蔵が声をかけるとその少年、久々知は足を止めて振り返る。
「一年は組の団蔵に虎若。何か用か?」
「あの、もしかして今から焔硝倉に行くんですか?」
「そうだけど。」
「やっぱり!僕たちさっき授業で使った火薬壷を片付けに行ったんですけど、」
「その、次の授業に遅れそうで、後で片付けようと思ってそのまま置いてきちゃったんです。」
「「ごめんなさい。」」
申し訳なさそうに頭を下げる二人に、久々知は目を瞬かせ、相変わらずの無表情で答える。
「なんだ、それなら私がやっておくよ。」
「えっ、本当ですか?」
「わぁ〜ありがとうございます!」
「いいって。それより次の授業に遅れるぞ。」
「わ、そうだった!」
「それじゃ先輩、僕たちこれで失礼しま〜す。」
二人が走り去ったのを確認して、久々知は再び焔硝倉へと歩きだした。
焔硝倉の中で気が済むまで整理をした名前が一息ついた時、またしても一難やって来た。
「ふぅ〜こんなものかな……え?」
再び感じた気配。今度は本当に微かなもので、気付いた時にはもうその気配の主は焔硝倉の入口に立っていた。
(ぎゃあ!なななんで忍たまがここに!?しかもこの制服の色、五年生だ!)
さすがに先輩の気配にまでは近づくまで察せなかった。どうして適当なところで出ていかなかったのか、自分の行動を今更だが悔やんでしまう。
「あれ、くの一教室も今片付け?」
その先輩が突然話し掛けてきたが、案の定名前は人見知りを全力で発揮してしまう。
「は、はい!授業が長引いてしまって…あの、もう片付け終わったので私はこれで失礼しますっ!」
「え?あ、ちょっと……あれ?」
後ろで何か言おうとしていたようだが、名前は聞こえないふりをして走りつづける。立ち止まれば面と向かって話をしなければならないだろうことは簡単に予想できた。そんな事、緊張しすぎてとても無理だ。なのに。
(うわあああん何で追ってくるのぉ!?)
焔硝倉からある程度離れたところで忍たまの先輩の姿が見えなくなったことに安心していると、なぜか今更近づいてくる気配に再び心臓は早鐘をうつ。もう一度彼と顔をあわせるなんて、考えただけで
「はっはずかしすぎて穴があったら入りたいっ!?」
突如、足元が不安定になり、気持ち良い音を立てて名前の身体が下へと沈んでいった。