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三木ヱ門もなんとか落ち着き、事態はこのまま終息に向かうかのように思われたが、あいにく左門はやられっぱなしで黙っているような性格ではなかった。
「そんなに必死になって、もしかして答えを聞くのが怖いんですか田村先輩」
「なんだと」
そして三木ヱ門もまた喧嘩っ早い性格だった。今度は名前が止める間もなく火花が飛び散り、あっという間に大火事へと発展した。
「あわわわ……ど、どうしよう」
これはもう自分達ではどうにもならない。誰か呼んで来ようと名前が考えた矢先、彼女の肩を誰かが叩いた。
「これは一体どういう状況だ」
「滝くん!」
横に並んだ彼を見上げて助かったとばかりにまくし立てる名前。どうにか二人を止めてくれとせがんでいると、後ろからもう一人やって来た。
「うるさいなぁ何の騒ぎ?」
「綾部先輩! 実はかくかくしかじかで」
いち早く反応したのは綾部と同じ委員会の藤内で、事の次第を説明し始めた彼に滝夜叉丸も耳を傾ける。
「ちょ、ちょっと藤内」
「なんだよ数馬、今忙しいから後にしてくれ」
ありのままを先輩らに伝える藤内の袖を引く数馬は、なぜか冷や汗を垂らしている。だが藤内はそれに気付かず、後にそれを後悔することになるなど、この時は思いもしなかった。
「三之助が名前を押し倒したぁ!?」
「ちょっ、滝くん!?」
誤解を招く言い方しないで、と焦る名前に構わず三之助に食ってかかる滝夜叉丸。時折関係のない愚痴のようなものが混ざっているようだが、日頃の鬱憤もぶつけているのだろうか。
さらに綾部まで三之助を睨んでいるように見えるのは気のせいではないだろう。何も喋らないのは口を挟む隙がないだけで、その表情からはほんのりと怒気が感じられる。
一方では左門と三木ヱ門、一方では三之助と滝夜叉丸。双方で舞う火の粉は少しずつ炎を拡散させていく。
先輩のあまりの言い様に同級生に荷担する者、それを仲裁しようとするが逆に挑発に乗る者、巻き込まれる者など、気がつけば名前以外は全員渦中の人となっていた。そして滝夜叉丸の放った一言で事態はさらに悪化の一途を辿る。
「よろしい、ならば戦争だ」