TOP > rkrn > 一難


あの後、三之助を探しに来た三年生達によって名前はやっと三之助から解放された。
案の定誤解していた彼らは、二人の様子を見るなり慌てて三之助を引きはがしにかかった。
中でも縄を携えた少年、富松作兵衛の反応は名前も目を見張る程早く、一番先に駆け付け問答無用で三之助の頭に拳骨を落とした。そして今、この状態である。

「本っ当ーにすみませんでした!ほら、お前も謝れ!」
「いでっ」

ごどん、と実に痛そうな音がしたのも気にせず三之助の頭を床に押し付けながら、自身も同様に平伏す作兵衛。所謂土下座である。

「俺なにもしてないのに」
「あんなもん見せられて誰が信じるか!こんなとこで盛ってんじゃねぇよ!しかも先輩に手出すなんて」
「あ、あの、富松くん?」

一連の流れが完璧すぎてここまで傍観しかできなかった名前だが、三之助の唱えた不満を聞いてようやく覚醒し、慌てて誤解だと伝える。
作兵衛の言葉から彼らがどういう想像をしていたのか、大体察してしまったのだ。確かに三之助は覆い被さったままなかなか退いてくれなかったが、それは彼らが想像しているような事情からでは無いはずだったからだ。
とにもかくにも、その誤解は恥ずかしいからと必死で説明する名前により、彼らの誤解は無事に解けたのだった。

「あーあ、作兵衛のせいで痛いなー」
「うっせぇ!名字先輩から退かなかったんだから失礼には変わりないだろうが!」

再び始めてしまった二人には馴れたものなのか、特に気にした様子もない他の三年生達の中で、浦風藤内が一人名前の傍に寄りこそりと耳打ちした。

「名字先輩。三之助がああいう事したのってもしかして」

勘が鋭いというよりはそれくらいしか思い当たらなかったのだろう。正に自分と同じ理由を予想した藤内に、名前も囁くように耳打ちをする。

「うん、私もそう思う。でもあの様子だとまだばれてはいないみたい」
「そうですか……よかった」

名前と同じ理由ではないが藤内もまた、委員会の先輩に箝口令を敷かれていた為に、ほっと肩を撫で下ろす。体育委員長に攫われたお嬢が実は化粧をして着飾った名前だったなんて、作法委員会以外に知られてはいけないのだ。

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