TOP > rkrn > 初恋

2


「肘は固定して軌道がぶれないように、最後まで的から目を離すなよ」


土井は普段忍たまの校舎で教えているので、くのたまである名前が彼と接する機会は少ない。たまに火薬や兵法の授業でくのたまの校舎に来る事もあるが、こうやって一対一で話す事など無いと言っても良い。
だからこそ極度の人見知りである名前はおどおどして俯いてばかりだったのだが、担当の生徒でもないのに熱心に教えてくれる彼に応えようと練習に集中しているうち、不思議と緊張は柔らいでいった。


「出来たじゃないか名前!」

「え、う、あ」


自分が投げたのだからしっかり見ていたのだが、目に映る光景が信じられない名前。だが土井の様子を見る限り、やはりこれは事実のようだ。


「あ、当たった……」


中心からは外れているものの、確かに的に刺さっている手裏剣がそこにある。じわりじわりと理解し始めていたそれを一気に実感させてくれたのは、いつの間にかすぐ傍まで来ていた土井だった。


「やれば出来るじゃないか!偉いぞ名前」

「う、わ……へへ」


頭を撫でる大きな手は、普段感じる同年代の異性への苦手意識や大人の男性へ抱く恐怖は感じられず、暖かく心地の好いものだった。人見知りで異性が苦手な筈なのに、何故彼に触れられても平気なのだろうと名前自身不思議に思っていたが、土井の笑顔を見ているとそれもすぐにどうでもよくなっていった。

この時から、名前の中で土井は他の誰とも違う場所へと位置付けられていたのだ。初めて感じるこの気持ちの正体に彼女が気付くのは、もう少し後のこと。

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