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「そういえば三人は何でこんなところに居たの?」
あれから、なかなか離れようとしないきり丸を何とかしようと名前が投げかけた言葉は、本人の予想以上の効力を持っていたようで、三人はぴたりと騒ぎを止めた。
「忘れてた!おれたち学園に戻る途中だったんだ!」
「そうだった!学園長のお使いの帰りにドクタケ忍者たちに追いかけられて…」
「あちこち走り回ってたからおなかが空いて動けなくなってたんだ!」
思い出したらまたおなかがへってきた〜とダレはじめるしんべヱを見て、名前は何かを思い出したように鞄のジップを持ち上げた。
「お腹空いてるの?だったらこれあげるよ。」
開いた鞄からお菓子をいくつか取り出し、三人に手渡す。
「これなあに?」
かわいく首を傾げるしんべヱに未来のお菓子だよ、と教えてやれば再び目を輝かせた三人はあっと言う間にお菓子を平らげてしまった。
「もう日が落ちてきたよ。早く帰らなきゃ。」
今度こそ本当に落ち着いたようで、乱太郎が不安げに呟いた。
「あ、じゃあ途中まで一緒に行ってもいいかな?とりあえず町に出なきゃ寝床もないから。」
自分一人では歩道にすら出れなかったので、乱太郎たちがいるうちにこの山を出なければ今日中に町には辿り着けないだろう。
この世界では帰る家すらないが、町にでれば宿がある。お金は自分の世界から持ってきたもの(金属製の簪などヘアアクセが沢山ポーチに入れてある)などを売れば当分なんとかなるだろう。
これで三人とお別れなのは寂しいが、まずは生きることを考えねばならない。全てはそれからだ。
こちらに来てからそう考えをまとめていた名前。
だが名前の言葉を聞いた三人は目を見開いた。