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暫し呆然とした後、は組の何名かの手を借りてようやく仕掛けから抜け出せた名前は、ここでは落ち着いて話せないから、というひどく納得する理由を告げた庄左ヱ門により、一年は組の生徒らと共に庄左ヱ門と伊助の部屋に訪れていた。
「名前さん次はこっち、これはなんですか!?」
自分が持ってきていた下着以外の全ての荷物を拡げ、質問攻めにあうこと数十分。予想以上のちびっこパワーにそろそろ参り始めた頃、兵太夫が指差した長方形の桃色を手に取る。
「これは携帯電話っていって、同じ物を持っている人と離れた所でも話せたり、手紙を送ったりできるんだよ。」
簡潔な説明でも充分驚いてる子供達を尻目に、ここでは使えないんだけどね、と付け足しながら電源を入れる。そういえばこちらの世界にトリップした時、充電できないから、となるべく長持ちさせるために電源を落としてそのままだったな、と考えながら完全に起動するのを待つ。
「わ、なんか光った!」
「電源っていうのを入れて、寝かせていたカラクリを起こして使えるようにしたんだよ。電話とメールができないっていっても写メとか動画は使えるから……」
そこまで言って待受画面が表示された携帯のディスプレイに視線を戻すと、自身の目を疑う光景が飛び込んできた。