1
昨夜、兵助達から名前ちゃんという女の子の話しを聞いてから、僕は悩んでいた。
後輩のきり丸達を身を呈して護ってくれた彼女はくのいちどころか、普通の町娘よりも鍛えられていない身体つきらしく、兵助達曰く害はなさそうだとの事。兵助もハチも口を揃えてそういうものだから、本当にそうなのだろう。でも直接彼女を見たわけではない僕は、いまいち信じきることができない。その理由はやっぱり彼女が未来人だということだろう。
そんな非科学的なこと、忍者を目指す身としてはそう易々と信じる訳にはいかないし、武術の心得がなくても間者なら出来ないわけではない。だけど兵助達は未来のからくりを見せてもらったとも言っていたし、きり丸達の恩人を疑いたくないし………
「雷蔵。」
「あっ、三郎。」
また何考え込んでんだ、と顔を覗いてきた親友に意識が戻される。そうだ、今は朝食を食べていたんだ。一緒に食べていた他の三人もずっと黙っていた僕を不思議そうに眺めていて、少しいたたまれない気持ちになる。何でもないから、と流して再び食事に手をつければ、皆も同じように箸を動かし始めた。
「あれ、三郎どこ行くの。」
朝食が終わって忍たまの友を取りに部屋へ戻ろうとすれば、同じクラスのはずの三郎は違う方向へ歩きだした。今日は外での授業は無かったはずだけど、どうしたんだろう。
「ああ、ほら雷蔵も行くぞ。」
「ちょっと待って。行くってどこに?」
「気になっているんだろう、例の未来人のこと。」
!
三郎には僕の考えていることはお見通しだったってことか。普段なら授業をサボったりなんてしないけど、彼女は今から善法寺先輩と街に行くらしい。僕が行かなくても三郎は行くんだろうけど、いつまでも悩んでいるのも嫌だし、彼女には悪いけど、二人で後をつけさせてもらうことにした。