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「もういい。聞く気はない」
ねえなんで?どうしてそんなこと言うの?左門はいつもニコニコ笑顔で「おぉ名前!どこ行ってたんだ!?探したんだぞ!」って駆け寄ってきてくれたのに、私を好いていてくれたのに
…呆然と見つめる先には私に背を向けて去っていく左門。そうさせたのは紛れもなく私で、左門にはなんの否もないのは明らかだった。
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私は三ろが好きだった。左門は私を好きだった。でも私はアイドルの追っかけみたいに、男気溢れる作兵衛とか、だるそうだけど、なんかえろっちいけど格好いい三之助とか、前向きでみんなを引っ張ってくれる明るい左門が好きだった。確かに恋愛として、三人が好きだったと言える。
世間的に許されることではないと理解していたし、本気で三人と卒業したら結婚したいとか、子供は何人がいいとか考えていたわけではなかった。ただ妄想したりとか、抱き着いてみたりとか、ほっぺたにキスしてみたりとか。意識してくれればいいのに、くらいの感情でちょっかいをかけていたりもしたし、意識してくれたらこの三人なら誰でもいいから付き合いたい、なんて最低極まりない考えを持っていたことも認める。…事実である、としか私には言いようがないのだから
「おっ…、おい名前!てめぇ何してやがる!」
「ん、いきなり何名前。俺に抱き着いても硬いでしょ」
「名前−っ!なんで三之助なんだ!僕にも!」
『えへへー、ぎゅー!』
「三之助ばっかりずるいぞ!」
「おめぇはいったいなにやってんだいつもいつも!少しは嫁入り前の娘の自覚を持て!」
『お父さんですか作兵衛は』
「いいから離れろ!」
『はぁーい、じゃあ左門とさくべにはちゅーしてあげよう』
「!?!?」
「…っ、どうせなら僕だけにしてくれ名前っ」
『えへへー』
曖昧な態度がいけなかったのでしょうか、それとも甘い考えがいけなかったのでしょうか神様。その両方だと分かりながら、私は三人に対する醜い恋心に似た憧れを、左門に好かれているという安心感から何のためらいもなく追い続けていた。三之助たちに可愛がってもらえるのが、左門が嫉妬してくれるのが、うれしかった。
わかりながら、こんな関係を手放せなかった
『まって、さもん』
「もういいだろう、お前の好きにすればいい。」
『ちがうの』
「何が違うんだ?頭のいい名前は分かってるんだろ?」
『わたし、さもんが、すきなの』
「笑わせるな」
涙が、出た。左門にそんなこと言われるなんて思ってもみなかった。きっと笑って、いつもみたいに笑ってくれると思った、のに
「名前…なんで泣くんだ」
『ごめんなさい』
「お前は…ッ」
『ごめんね、すきなの』
信じてくれなくてもいいと思った。殴られようが蹴られようがかまわなかった。ただ私が抱え続けた恋心だけは今伝えなければ行き場を失うことは確かなことだ、と理解した脳が、吐き出せ吐き出せと煩かった。
「……好きだ」
ぽつり、左門が言った言葉が宙を漂って私の耳に届いたころには私は左門の腕の中にいた。
「好きだ、名前」
「今まで、ずっと」
「これからも、ずっと」
きみがすき
(ああずいぶんと)
(わたしのせいで遠回りをさせてしまったね)
(おめでとう恋心)
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こうふく、幸福、降伏。の小春ちゃんから頂いた10万打祝い!三ろの誰かとリクしたらみんなと絡めてくれた^^ありがとう小春ちゃん!マジギレした左門たんにはあはあした私は変態です。普通に萌えたし。よって十分祝ってます。ごちそうさまでした!