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――どうしよう。まずいことになった。
作ちゃんを夏祭りに誘ったのは二日前。そこからさらに遡ること数時間。
私は、次屋くんと神崎くんに相談を持ちかけていた。
「俺たちは別にいいけど、名前はそれでいいのか?」
「だって、二人で行こうって誘って断られたらと思うと怖くて。・・・・・・四人なら自然かなって」
言葉に詰まりながら答えれば、神崎くんが何か閃いたように手を叩く。
「四人で行く約束をして、当日に私たち二人が行かなければいいんだな」
「それは駄目!そんなあからさまなことしてこの先気まずくなったら嫌だし」
むぅと唸った神崎くんを横目に次屋くんが口を開く。
「じゃあさ、会場ついて少ししたら俺たち別行動するから。祭りは人が多いだろうし、はぐれたってことにすれば自然と二人になれるだろ」
ぱっと顔を輝かせた神崎くんに、にやっと笑う次屋くん。
そんな二人にお礼を言って、私は作ちゃんを誘いに行ったんだ。
それが二日前。
計画は概ね順調だったはずだ。
「一番奥、神社の横の広場、カラオケ宴会場で待ち合わせな。俺らは屋台裏の草むら抜けて移動するから。うまくやれよ」
次屋くんは片目をつぶって、小声でそう言った。
二人が人ごみを利用して姿を消すのが、予定より少し早かった気もするけれど、
気を利かせて早めに別行動に移してくれたのだと思う。
だけど、それが裏目にでたみたいだ。
どさくさに紛れて作ちゃんと手を繋げたのはラッキーだったけれど、これではお祭りどころではない。
両側に並ぶ屋台を横目に、ひたすらに人ごみをかき分けて進む。
「ちょっと、作ちゃん、歩くの、早いって…!」
慣れない浴衣は裾がもつれるし、下駄だって歩きづらい。鼻緒がすれてじわりと痛む。
「あ、悪い、俺・・・・・・」
申し訳なさそうに立ち止まり、休憩も兼ねて二人で道端の石段に座る。
「まいったなぁ」
そう呟く作ちゃんは、心底、困ったという顔をしていた。
彼は、昔から心配性だった。だから今もきっと、二人のことが心配で仕方がないんだ。
適当に時間をすごしたら、奥の広場で合流するということを、作ちゃん以外の私たちは知っている。
なんだか隠しごとをしていることが申し訳なくなってきた。