帰ってきた用具委員長
スパァンッ
「待たせたな!」
「本当にね」
「……………」
先輩が意気揚々とやってきた…のをあしらう善法寺先輩がなんだかとてつもなく大人な気がしてならない…
というか食満先輩の手の中の籠を見るに鍋の食材を探しに行って下さってたのか…。探す…そういやあいつらは委員会まだやってんだろうか…下手に動いてねぇと信じたい。切実に。………まさかとは思うが会計や体育に限って…定刻どうりに終わっててあいつら今頃山で迷ってたり…いやまさかな…
「…作兵衛?」
「…ハッ…!す、すみません委員長!お疲れ様です!」
「はは、気にすんなよ」
「そうそう遅かったしね」
「伊作……」
「うわ…何…?接吻ならしないよ」
「ちっげぇよ馬鹿!俺はそっちじゃねぇ!」
「僕おなかすいちゃった〜」
「僕もぉ〜」
「僕も…」
はやくはやくと委員長にすがりつく後輩(平太は控えめな上目使いで見つめていた)(食満先輩の顔が喜びに歪んだのを俺は見逃さな…出来れば気づきたくなかった)の頭を先輩方が撫でたのを合図に、いつの間にか善法寺先輩が完成させていた鍋を囲んで鍋パーティーがやっと始まった。…俺も撫でられたのがなんだか…いやもう考えるのはよそう…
『美味しい〜っ』
「おいしいです…」
「伊作お前いつの間に具材鍋に入れたんだよ」
「僕忍者だし」
「お前最近冷たくないか…」
「わかる?」
「………。」
しんべヱの吸引により(食事と言えるスピードではない)鍋はあっという間になくなった。俺はといえば平太や喜三太が取り損ねないようによそってやるのが忙しくて白菜しか食べていない。惜しいことをした…と思うがいつもの癖でいらぬ世話をしたにも関わらず珍しく声をあげて笑う平太と、満足げなしんべヱや喜三太や先輩方の顔を見たらなんだか心臓のあたりがぎゅうぎゅうして息苦しさも手伝って何も考えられなくなってしまった
「作兵衛ー、美味しかったか?」
「楽しかったねー」
先輩方がニコニコぽんぽんと二人して俺の頭を撫でている。ガキくさいだとか、…やっぱり三年にもなってこれは恥ずかしいとか思うことはいろいろあるが、俺もチビ達の頭を仮に誰かが俺の背を越えても撫で続けるんだろう。