そこに帰りたいのです
俺たちは現在森の中にいる。ここにいるのはただ二人だけ、俺こと次屋三之助と決断力のある方向音痴として名高い神崎左門だ。
…そして俺たちは現在迷っている。左門と行動して道連れになるのはいつものことだが、なぜか一人で帰ろうとしても変えることが出来ないし、こいつと居るのが好きだから・・・・・・別に深い意味はないからな、好きだから別に恨んだりもしない。俺大人だし、こいつちっせえし。
「今日も見事に迷ったな!」
「…そうだな。」
「まぁさくべが救出してくれるだろう!」
「俺ら3年にもなって作に頼りすぎじゃね?」
「いざとなったら、だ。さ!進退は疑うなかれ!行くぞ三之助ー!!」
やっぱちっせえ…じゃなくて、作は今頃どうしているだろうか。また心配して探しているに決まっている……あの縄に縛られるのいてえんだよなー…。
森はもうすっかり日が落ちてしまっていて、月明かりだけが左門の色素の薄い髪を照らしているのが妙に綺麗で…だから別に深い意味はない、俺女が好きだし。
「さくべー心配してるかな」
「そりゃそうだろ、なんか夜だし」
「三之助森に詳しいだろ…ここどこか知らないのか…?」
「あの先輩について行くのに周りなんか見てらんねぇって。今日はおとなしくここで居た方がよさそうだな。」
「ごめん」
「気にすんな」
「ごめん」
「…いいって」
それでも隣で一言 ごめん と呟いた悲しそうな左門の瞳に、自分の泣きそうな顔が写っているのが見えた気がした
「さくべがさ、」
「…うん」
「来てくれたら…。いや、さくべが来たら肩揉んであげよう!一緒に!」
「お、いいなそれ。あいつの肩ガッチガチっぽいもんな」
「…寒いな」
「……ああ」
作は一人で今も俺たちを探しているだろうか