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二月末、腹が立つくらいの快晴。
新羅とセルティが住むマンションほど広い部屋はないが
りおと二人で住むには良い広さのマンションに引っ越した。
元より使っていた家具を
幾つか互いに持ち寄って
(と言っても数はない)
必要なものは新しく新調した。
陽当たり良好
都心にも関わらず家賃もまだ安く
騒音も少くて
時々、近所の犬の鳴き声が聞こえる程。
何件かりおと見回ったが
満場一致でこの部屋に決めた。
「シズ、お昼ご飯できたよー」
お蕎麦にしてみました、と
のんびりした口調で
りおがお盆に鉢を2つのせてやってきた。
リビングに積まれた段ボールの片付けをしていた俺は
手を止めてテーブルの方へ寄っていく。
「はい、おはし」
手渡された新しい箸を受け取って
蕎麦に口をつける。
すると横に座ったりおは少し不安気に
「味薄くない?大丈夫??」と
小首を傾げながら尋ねてきた。
調理師の専門学校に通っていたりおの作った蕎麦が
不味いわけがなくて
「ひょうどひぃ(調度いい)」と答えると
嬉しそうに目を細めて
「ふふ、よかった!」とりおは笑った。
俺らぐらいの歳にしては珍しい
黒色の髪を耳にかけて
軽く冷ましてからりおも口に運ぶ。
その仕草に見っていると
視線に気が付いたのか
「美味しいね」
「ああ」
ニコリ、と顔を上げてりおは笑った。
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