01

    
家に帰ったら

頭に猫耳を生やしてユラユラと尻尾を振るなまえがいた。

何が起こったのだろうと瞬きを数回して

ギュッと頬をつねってみるもズキンと痛みが神経をはしる。

(夢じゃない、か…)

「臨也、とりっくおあとりーと」

ズイッと両手を俺の前に出したなまえは

上目遣いに「臨也」ともう一度俺の名前を呼び

反応を返さない俺を見て小首をかしげた。

「可愛いね、なまえ」

「ん?」

フワフワとなまえの頭から生える耳を撫でてやれば

くすぐったそうに目を細める。

撫でた時に指で確認した耳は

どうやら市販で売ってる仮装用の物を着けているのではなく

地肌から本物の猫耳が生えているようで…。

「さて、お菓子だよね」

買い置きなんてあったかなーなんて言いながら靴を脱ぎ

スリッパを床で擦りながらキッチンへ行く。

すると、後ろからなまえが尻尾をユラリユラリと揺らしながらパタパタと音をたてて着いてきた。

(ああ、いつも可愛いけれど耳と尻尾のオプションもあってかいつにも増して愛らしい…!!)

脚立をキッチンまで持ってきて、コンロの上にある収納棚を開けなまえ専用の缶を開けた。

しかし、中身は空っぽで…

「残念だったね、なまえ」

「なんで?」

「お菓子がないよ」

脚立から降りて「ほら見て」と言いながら

缶の中身を見せて手渡せば

なまえは「ほんとだ」と残念そうに言って耳をペタリと垂らした。

(缶を逆さにしてもお菓子は出てこないよ)

そんな彼女の姿に理性が崩れかけるも必死で保ち

「なまえ」と名前を呼べば視線は缶から俺へと移される。

「悪戯して?」

「あ、そっか」

「どんな悪戯をするの?」

なまえの手から缶を取り上げて空いた手を引いてリビングへと移動する。

その間も「うーん」と考えるなまえに心の内で「ごめんね」と謝った。

実は今日に限って買い置きのお菓子がないのは計算されたものだからだ。

俺の予定では帰宅してすぐにトリック オア トリートと言って

なまえに悪戯をするつもりだったのだけれども…

「決まった?」

ソファーに腰を下ろし、自分の足の間になまえを座らせ後ろから左腕で抱き締め

愛らしく生えている耳をもう片手で撫でながら問えば

小さく「うん」と返事が返ってきた。

「何するの?」

「ちゅーする!」

そう言った瞬間に頬に当たる柔らかい感触。

これは、悪戯?と思ったけれど

キスをした当の本人が顔を赤くして笑っているから、まあ良いや。


Happy Halloween!

(ねぇ、なまえ)
(??)
(トリックオアトリート?)
 

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