03

she side:


着ていたカーディガンを脱いで

それに子猫をくるんであげた。

少し肌寒いけれど、これくらい平気。

傘を右手で持って、左手で子猫を抱えて

ゆっくり歩きだす。

ふと前方から見知った男が傘もささずにやってきた。

「濡れてる」

「傘、忘れちゃって」

だから入っていい?と私の目の前に立ち止まったのは

同居人兼彼氏である折原臨也だ。

濡れたままでは、さすがの彼でも風邪を引いてしまうだろう

それに断る理由など無く「うん」と頷いて傘の中に招いた。

ありがとう、と傘の右側に入った臨也と

家に向かって歩きだす。

「波江にお使い頼まれたんだって?」

「お豆腐が無いって言ってたから」

「なまえ好だもんね、豆腐」

「ちゃんと臨也の分も買ったよ」

「そっか、ありがとう」

「ところでさ、なまえ」と臨也が立ち止まって

私の手元に目線をやる。

「それ、どうしたの?」

「…ひと、り、だったから」

それ、と言われたのは

紛れもなくカーディガンにくるまる子猫。

「連れてきたんだ?」

「ごめんなさい」

言われてから

連れて帰った後の事を考えていなかったのに気付いた。

あの家は私の物じゃない、臨也の家だ。

家主の許可を得なければ

子猫は家の中に住ませてやれない

或いはマンション事態がペット禁止かもしれないのに。

「ごめ、なさっ…!」

何で、もっと考えてあげれなかったんだろう。

ああ、このままでは

この子は私と同じ思いをさせてしまう。

なんだか悲しくてポロポロと涙が頬を伝っていく。

それを見た臨也は笑って

「謝らなくて良いよ、なまえは優しいね」と言ってくれた。


: side end

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