「な、なぁユリコ。」
「あ?」
「…これは何なんだ?」
「何って飯に決まってんだろ。」
自信気に笑うユリコにひきつった笑いしか出ないのは何故だろうか。
授業が終わり筆や教科書を戻しに部屋に向かえば一枚の置き手紙。
文字はユリコのもので、食堂で待っているとのこと。
ユリコはすっかり学園に馴染み、何故か食堂のおばちゃんと仲が良い。次いでに言うとユリコはおばちゃんの手伝いをしているからかご飯のリクエストを出来る。ユリコは私の好きなものを知っているため、必然的に私の好きなものが増える。ユリコ曰く私の喜ぶ顔がみたいのだとのこと。
其れは其れで凄く嬉しい。毎日卵焼きが食べれるのは嬉しいし何より私のために頑張るユリコを見るのは実に微笑ましい。例え私より身長が高くて立花先輩顔負けのサラストヘアーだったとしても。
だから、目の前にある最早物体としか言いようがないものを作ってしまったのがユリコならば、私はこれを口に入れて咀嚼した後喉に通して胃に収めなきゃいけないのだ。
しかしながら私はこんなモノを食べてお腹を下さない自信がない。寧ろトイレと親友になれる自信がある。どうしよう頭が痛くなってきた。まず匂いからして危険なんだ。見た目は目を瞑っていけばなんとかならない気がしないこともないが、匂いは誤魔化せない。
「…どうしたんだ?」
「え?」
ユリコの声に顔を上げればユリコは心配そうに私を見ていた。
ユリコの言葉にどう返そうかと考えていればユリコは眉を下げて悲しそうな瞳をしながら苦笑いを浮かべる。
「…そうだよな、俺が作った飯なんか食えないよな。ごめんな。」
そう言うとユリコは机に乗ったお皿を取ろうと白く綺麗な腕を伸ばす。
「ああ!いや!違うんだユリコ!」
慌ててユリコの腕を掴めばユリコはふるふると首を降り私の腕を払う。
「無理すんなよ。ごめんな、迷惑かけて。」
「む、無理なんてしていないし迷惑もかけてない!」
ユリコがあまりにも泣きそうな表情をするから、つい大きな声を上げてしまった。
ユリコは目を瞬かせ私を見ているが、私は今必死なんだ。ユリコを悲しませるなんて絶対にしたくない。
「ゆ、ユリコが作ってくれたということに感動していたんだ!」
強ち嘘ではない。
実際ユリコが料理を作ってくれたと聞いたときはかなり嬉しかった。本当に嬉しかった。
ただ、料理を見た瞬間ちょっと思考回路が悪い意味で止まっただけなんだ。しかしこれは仕方ないと思う。誰でもあんなの見たら思考回路止まるって。
ユリコを必死に説得すればユリコは嬉しそうに、恥ずかしそうに目を細め言葉を紡ぐ。
「なんだ、そういうことかよ。焦って損したじゃん。」
「あはは!ユリコはお茶目さんだなぁ!」
「うん、お茶目さんとかキモい。」
ユリコの毒にも忍耐はついた。
しかし、しかしだ。目の前のモノが今から胃に入ると思うと今から胃が痛くなる。
「頑張って作ったんだ。」
「…っ!」
頑張れ、頑張れ三木ヱ門!
愛しの可愛いユリコが作ってくれた料理だぞ?残すわけにはいかない。ユリコを悲しませることなんて出来ない!
「お、美味しそうだな!是非いただくよ。」
ユリコは花が咲いたような笑顔を浮かべる。うん、可愛い。ユリコの為に頑張ろう。
「まだまだあるからな!」
「……。」
明日生きてるかな。
"ごはん"らしき物体
ユリコ、二度と料理は作っちゃいけないよ