「三木ヱ門、朝だよ。」

揺すられる感覚を感じて目を開ける。一番最初に視界に写るのはにっこりと笑顔を浮かべるユリコの姿。
同室者はすうすうと未だに寝息をたててぐっすりと寝ている。コイツは昨日実習から帰ったばかりだからかなり疲れているようで、起きる気配はない。

「…ああ、ありがとう。」

ぐっと背伸びをすると骨がぽきりと鳴った。ユリコを見るとただぼーっと襖を眺めていた。
ユリコが人間になってしまって一週間。学園長に知らせるときはどうなるかと思ったけど正直に話せば学園長は何時ものようにけらけらと笑いながら一緒に住まわせることを許可してくださった。
思い付きに困ることは沢山あって、真面目にウザイと思うことも沢山あったけど今日ばかりは感謝した。因みにユリコが人間になってしまったということは学園の生徒は全員知っている。
学園長先生が態々朝会を開き発表したのだ。前言撤回したくなった瞬間だった。
兎に角一年生がウザかった。
撓に私に詰め寄せあーだこーだ聞いたかと思えばユリコに近付きまた何か質問したり体を触ったり。
男だろうが何だろうがユリコは私のだから当然気分は悪い。
下級生は声を上げれば散るが五年と六年は怒鳴るなんて出来ないし、どうしようか迷っていたらユリコが「疲れました。」と言ってその場から逃れることは出来た。よくやったユリコ。

「さぁユリコ、散歩に行くよ。」
「わかったー。」

制服に着替えてユリコに声をかければユリコは感情の含まれているかわからない声で返事をした。
ユリコとの散歩は毎日していたから、ちゃんと其れは続けている。
何よりユリコが散歩をしようと言ってくるから止めようにも止めれない。
散歩はうっすらと昇る朝日を見ながら学園を歩くだけ。普段と変わりはない。
ユリコは景色をまじまじと見つめ時折楽しそうに声を上げるだけ。
鶏が鳴き始めればユリコは部屋に戻って私が授業を終えるまで寝る。
たまに絵を描いたりサチコたちに話しかけたりしているらしく、サチコたちが思っていることを教えてくれたりする。因みにサチコも男だのこと。

「んじゃあ、いってらー。」
「ああ、ちゃんと待ってろよ。」

分かってるよ、とでも言うように顔を歪めるユリコに溜め息を吐く。
ユリコは存外口と態度が悪かった。
寝起きというべきか、朝方は普通だが私が授業に行くときと帰って来てからは涙が出る程に悪い。
私はそんな風にユリコを育てた覚えはない。
しかも態度が悪いのは私限定と来た。いくらユリコを女の子とばかり思って少しがっかりしてたとは言え悲しい。
だってユリコは私の大切な子だから。
最後にもう一度だけ溜め息を吐くとユリコから頭を撫でられた。ユリコは私より身長が高い。

「…早く帰って来いよ。」

ユリコは恥ずかしそうに頬を朱に染めてはにかむ。

「…っ、当たり前だ!」




ああ、もう可愛いなぁ!






この声が目覚まし替わり
眠気なんて飛んでしまう



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