僕の肩に寄り掛かり、すやすやと寝息を発てるユリコにだらしなく口元が緩む。
目を真っ赤にさせながらお互いに頭を下げたあの日から数日、一年は組も大人しく、非常に充実した日々を送っている。
「………。」
ユリコの閉じられた白い瞼、小さく揺れる黒い睫毛。
最初こそ何故男なのだろうか、と酷く混乱したが、今ではユリコが男で良かったと思う。
ユリコは私が手入れしていただけあってか、綺麗な顔立ちをしているし性格だって良い。
もしユリコが女だったら、今現在私と一緒に過ごせないし、確実にくのたまがユリコを私物化してしまう。
考えてみろ、ユリコが女ならばきっともっと美しくて聡明な女人だったであろう。
くのたまから着せ替え人形の様にされ、もしかしたら忍たまがユリコに惚れていたかもしれない。
そんなの不愉快だ。
ユリコはこれ迄も此れから先も、ずっと私の大切なものなのだ。
誰かに渡すなんて滝夜叉丸を褒めてやる以上に有り得ない。
「…ん、」
身動ぎするユリコの頭をゆっくりと膝に移し、寝やすいように体を倒す。
ユリコは体を縮こませ私に寄り添う様に眠る。
顔はあまり見えなくなったが、こんなに甘えてくるユリコは滅多に見れないため表情筋が崩壊するのではないかと思う程表情が緩む。
優しく頭を撫でればユリコは気持ち良さそうに口元を緩める。
何か良い夢でも見ているのだろうか。夢に私は出ているのだろうか。
そんな事を考えながら頭を撫で続ける。
暫くするとユリコは小さく声を上げながら眠りから覚めて、膝に頭を乗せたまま体を動かし私をじっと見つめる。
「どうしたんだ?」
首を傾げながら問えばユリコは視線を合わせる事なく「なんでもない」と返した。
何かある、と云う事は分かったが無理に聞くのは気が引けるし、ユリコなら何時か話してくれるか、と其れ以上は追及する事は無く、ユリコの頭を撫でながら静かに時間を潰した。









机と向き合い課題を終わらせる三木ヱ門へ視線を向ける。
三木ヱ門はさらさらと筆を走らせながら着々と白い紙に黒を増やしていく。
部屋には三木ヱ門の擦った墨の香りが充満する。
余談だが、三木ヱ門の同室者は学園長の御使いで暫く学園に居ないから、と三木ヱ門とオレの部屋化してきている。
「………、」
赤い瞳を縁取る長い睫毛が揺れる度に胸がぎゅう、と苦しくなる。
アレかな、コレが切ないと云う気持ちなのだろうか。
オレに心臓が有るかは判らないけどどくどくと脈は打っているから一応有るのだろうか。
まぁ、どうでもいいのだけど。

──カタ、

三木ヱ門が筆を置きぐっと背伸びをする。


「…ユリコ?」
「………。」
「今日のユリコは甘えん坊だなぁ。」
「…うっせー。」

気付いたら体が動いて、三木ヱ門に抱き着いていた。
三木ヱ門はくすくすと綺麗に笑い背に手を回してくれる。
ここ最近で慣れた動作なのに、何故か目頭が熱くなった。









甘えたい時もあるさ
嗚呼、切ないなぁ。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -