短編 | ナノ


「しーろちゃん!」
「うわっ!」
後ろから小さな体を持ち上げれば体の持ち主は吃驚したように声を上げる。
「おはようシロちゃん。今日も可愛いな。」
体の向きを変え、お互い顔が見える位置に動かせば吃驚したような表情からぽわぁ、と花が咲いたような笑顔に変わり、おはようございます、と返してきた。
「えへへ、先輩も相変わらずおっきぃですね。」
ふにゃあ、と笑うシロちゃんを抱き締めれば、苦しい、と楽しげに笑い声を上げる。
この天使のように可愛い後輩はクラスメイトである暴君の委員会に属しているため、あまり一緒に居れないので、暇を見つけては猫可愛がっていたら何時の間にかかなり懐いてきたのである。俺にとったら万々歳だ。
真面目にシロちゃん可愛い。
ぽへぇ、ってしてるけど絶対この子マイナスイオン的な何かを放出してるんだって。
「シロちゃんは何してたんだ?」
「えっとですね、お散歩してました。」
聞きましたか皆さん?
ぽかぽかと暖かいこの日に可愛い可愛いシロちゃんがお散歩ですよ?
「そっかそっか。」
シロちゃんを直ぐ側の草原に下ろし、隣に腰を下ろすとシロちゃんは嬉しそうに笑う。
基本的に口数の少ないシロちゃんは俺と居る時は大抵ぽわぽわと笑っていているのだが、たまにボケるとツッコミを入れてくれる非常に優秀な子だ。
隣に座るシロちゃんはうつらうつらと首が船を漕いでいる。
シロちゃんの回りに蝶々が見える。伊作曰く俺にはシロちゃんフィルターがかかっているらしい。
意味の判らんフィルターだがシロちゃんが可愛いと云うことで気にしない。
「シロちゃん、眠いなら眠りな。」
シロちゃんの頭を膝に置き茶色いふわふわとした髪を撫でる。
本当ならもっと柔らかい膝がよいだろうが、生憎俺の膝は女性のように柔らかくない。許せシロちゃん。
シロちゃんはゆっくりと瞳を閉じて、寝息を発て始める。
昨日は確かランニングをした、とあの暴君が言っていたから、疲れたのだろう。彼奴のランニングは辛い。
一度ランニングに参加してみたがあんなのランニングじゃない。
下級生にとったら拷問にすら値する。
シロちゃんは勿論、金吾や左之助、滝は本当に凄いと思う。
俺が体育委員だったらとっくに辞めている。…其れでも尚体育委員会を辞めないのはあの暴君が慕われているからだろう。
確かに彼奴は暴君だが、後輩が可愛くて仕方ないと云った様子だし、滝も何だかんだ言って暴君を尊敬しているみたいだから、可愛い後輩たちはずっと体育委員会だろう。
「こんなことなら俺も体育委員になっときゃよかった。」
あ、同じクラスから同じ委員会はダメだから無理か。直ぐ様考えを取り消す。
シロちゃんのあどけない寝顔に自然と口元が緩む。
俺たちは、こんなに無防備にはもう寝れないから、余計に愛しく思える。
友愛、博愛、隣人愛、自愛、慈愛、兄弟愛、親子愛、情愛、恋愛、何れにも当て填まらないけど、すやすやと寝息を発てるシロちゃんが堪らなく愛しく思える。
「…ゆっくりおやすみ。」









(今だけは偽善者でいさせて、)






シロちゃんとお昼寝したいです。
御借りしました→休憩



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