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 子供のようにフレイムさんに手を引かれシルフ様の家に戻ると、玄関にはエコーさんとフラウさんが待ってくれていた。
「イリスちゃん! よかった、戻ってくれたんだね!」
「ごめんね、私たち、イリスちゃんを騙すつもりじゃなかったの……」
 二人はそろって頭を下げた。私は慌てて、二人に駆け寄った。
「謝るのは、私です。取り乱したりして、ごめんなさい」
 私もぺこりと頭を下げる。だって悪いのは私なのだ。
「イリスちゃんが謝ることないんだよー! もとはと言えば、巻き込んだ俺たちが悪いんだからさ」
「そうよぉ。今からでもお兄様の所へ送ってあげられるんだから、遠慮せず言ってね?」
 私は首を横に振った。
「いいえ。確かに兄の所は居心地が良いし、平和でもあるでしょう。でも、私はみなさんと世界を救いたい。平和な世界を取り戻したい。……ご迷惑じゃないのなら、ご一緒させてください」
「その言葉を待ってたよー!」
「シルフ様!」
 家から風に乗って――その言葉が正しいかは解らないが、まるで空を滑るかのように――出て来たシルフ様。後に続いてイズナさんも出て来た。
「君に世界を託すよ、イリス・ルイ。実は今、ハイスヴァルムに同志諸君が集まってるんだ。イズナも一緒に行かせるから、君もそっちに行ってくれるかな?」
「同志諸君……?」
「行けばわかるよーん」
 シルフ様は楽しそうにからからと笑う。そしてふわりと私の後ろに回り込んだ。首に、さらりと何かがかけられる。そっとそれを手に取ると、そこには雫を模った、日に透ける緑色の綺麗な石があった。
「ネックレス……?」
「似合ってる似合ってる〜! それ、あたしからの餞別だよっ」
「えっ、そんな、私なんかに……!」
 イズナさんが私の目の前に立って、人差し指で唇をふさいだ。私は驚いて口を閉じる。
「キミ、そういう、私なんかっていうの禁止。私なんかっていう人に、他は付いて来ない」
「は、はい」
「イズナの言うとおり! 自信もってよ、イリス」
「はい!」
「うん、いいお返事だ!」
 シルフ様の笑顔には一片の曇りもない。このお方は、人間を、いや、世界を愛しているのだ。自分の力がなくなっても、信仰してもらえなくても。私はこの方を、決して裏切ってはいけないと思った。
「じゃあ、行こうか、イリス」
 フレイムさんの声に私は頷く。
 私は帰るのだ。
 生まれ育った、あの灼熱の国へ。



Mahen Episode4 
【It is time】






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