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バオアーの玄関口となっているフォレという小さな村の入国審査はさほど厳しくなく、簡単な身体検査のみですんなりと入国することが出来た。
一歩バオアーに足を踏み入れると、ふわりと優しい風が吹いてきた。振り返れば、そこには変わらぬ黄砂があるというのに。不思議だ、とても。
 さわさわと揺れる木々、穏やかに流れる雲。今まで一度も感じたことのない草色の空気。
「きもちいい……」
「本当だな。あっちとは全然違う」
 翠の大地を踏みしめながら歩く。図鑑や本でしか見たことのない蝶や虫が飛び回り、草花は視界一面を飾っている。立ち止まって全てを見たい気持ちを抑え、村の市場に入った。
 思っていたよりも人通りは多くない。私はちらりとフレイムさんを見た。彼も不思議そうに市場を見やっている。
「前に来たときは、もうちょっと賑わってたと思うんだけどな」
「何ででしょうね……?」
 確かに、今まで見てきた二つの町の賑わいとは程遠い。露店にも品物があまりない。神と農業の国だというのに、果物や野菜すらも並んでいないのはどうしてだろう。
「いらっしゃい、あんちゃんら旅人かい?」
「ああ。ここらはこんなに物流が無かったっけ?」
 ふむ、と途方に暮れたように眉を曇らせる店主のおじさん。私とフレイムさんは顔を見合わせた。
「最近取れ高が無いんじゃよ」
「どうしてです……?」
「畑が荒らされるんじゃ」
 フレイムさんは鞄から羽や肉を取り出しておじさんに渡す。他のお店の店主さんたちも集まって来て、ちょっとした輪になっていた。
「もしかしたら、ゴブリンどもの仕業かもしれんのう……」
「ごぶりん?」
「お嬢ちゃん知らんのか。こわーいバケモノじゃよ、わしらじゃどうにもできん」
 困り切っている人々を見て、フレイムさんはぽりぽりと頬を掻いた。
「あの、フレイムさん」
「言いたい事は解ってる」
「……助け、てあげられないでしょうか」
「……イリスはいいのか?」
「私も、皆さんの助けになれるなら……頑張ります」
 場がわっと沸いた。本当に困っているのだろう。少しでも、助けになれればいいのだが。
「菅あの森の奥の洞窟にある。行ってみてくれんかのう」
「帰ってくるまでに、預かったこれは査定しておくからの!」
「解った、よろしく頼む」
 私とフレイムさんは意を決して踵を返した。その背中に声がかかる。
「もう一人いっとるんじゃった。若い兄ちゃんじゃ、見かけたらよろしくのう!」



Baor Episode1
【Let's go somewhere else.】






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