泣き方を忘れた小鳥のように
せんぱい、せんぱい
やっぱり僕は、あなたを忘れられませんでした。
リリーと結婚して、ハリーが生まれて、僕は幸せでした。凄く、凄く幸せでした。2人を愛していたから。
でもね。せんぱい
やっぱり僕は、あなたを想わなかった日なんて、一度もなかったんだ。2人以上に、狂おしいほどあなたを愛していたから。
ごめんね。リリー、ハリー。
君たちといれて幸せだったよ。
君たちを本当に愛していたよ。
けれど、最後の最期で想うのは、ルシウス先輩の事しかなくて。ああ、やっぱり僕は馬鹿だなあなんて笑いさえこみ上げてくる、こんな僕を許してくれ…
そうして静かに、ジェームズは息を引き取った。
「ポッター」
ぽつり、とそこに立ち尽くすひとがいた。横たわるその亡骸を見て、彼は、苦痛そうに顔を歪めた。
「……………そうか」
死んだのか。
ジェームズ・ポッターは。
あっけないものだ。
彼を、失ってしまった。
あれだけ、うるさいと思っていたやつだったのに…
「もう、声も聞けないのか」
そう考えただけで、胸が締め付けられた。
そっと、ジェームズの頬に触れてみる。まだ、生暖かい。けれど徐々に冷えて行く体は確実に死んでいるのだ。生きているときは、決して自分から触れることなどなかった。
「なあ、この感情はなんなんだ。答えろ、ポッター」
返事は当然返ってくることはなく、泣きたい衝動に駆られつつも、涙は決して溢れなかった。まるで泣き方を忘れた小鳥のように、ルシウスは、泣くこともできず、ただ、そこにある死を、見つめることしか出来なかった。
___
鹿が亡くなった直後、こっそりルシウスが会いに行ったという話。
prev / next