文 | ナノ

君の世界と僕の世界



「お前なんか嫌いだ」
淡々と、発された残酷な言葉に
「好かれようとなんて、全く思ってませんから」
なんて、皮肉で言い返す。

本当は身が裂かれるほど苦しいのに、なんて兄さんは知る由もないだろう。



僕はブラック家の次男だ。純血であることに誇りを持っている母親、それに反抗した兄。
それによって、ブラック家を継ぐのは必然的に僕だ、という構図が出来上がっている。

僕は、純血なんて興味ない。
でも家に反抗しようとも思わない

兄さんはそんな僕を嫌って、ブラック家の犬だ、とか言っているけど…
でも僕は兄さんの事は嫌いじゃない。

いや、むしろ…――――



小さいころはよく、家の庭でじゃれあって遊んだ。
兄さんは、悪戯っこで、僕に意地悪ばっかだったけど、でも、時々優しく頭を撫でてくれた。

良い兄だった、と思う。

そして僕にとってあれほど幸せな時間はなかった。そして、もうそれは訪れないだろう、たぶん一生。

いつからだろうか、僕と兄さんがすれ違っていったのは。

兄さんがブラック家に反抗して…


“長男なのに”
“ブラック家を継ぐ者として”

口を開けば母様はそればかり。兄さんにちっとも自由を与えようとはしていなかった。
もし僕が、反抗したら…もっともっと兄さんに圧力がかかると、僕はそう思った。兄さんが自由に、幸せに暮らせるんだったら、僕は、ブラック家の犬でもなんでもなってあげる。それがたとえ兄さんに蔑まれることになっても。

もう一生、兄さんの世界と、僕の世界が交わる事が無くても。


兄さんが、好きだから



___
健気なレギュ…!
擦れ違いな黒兄弟です。

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