文 | ナノ

感謝して頬に


「ねえ、摩耶花知ってる?今日はキスの日らしいよ」
「な、キスって!ふくちゃん、いきなりなに言い出すのよ!」
「いや、まあ特に他意はないんだけどさ」

「折木さん、キスの日って具体的になにかするんでしょうか?私、気になります!」
「確か、日本映画で初めてキスシーンがある映画が封切りされた日、じゃなかったか?別に特になにかするわけじゃないだろ。恋人同士ならキスするのかも知れないが…」

 あーあー奉太郎ってば、千反田さんに迫られて顔赤くしちゃって。すっかり薔薇色に近づいてるんじゃないか?

「別に恋人同士じゃなくてもいいんじゃない?日頃の感謝を込めてーとか。たまにはイベントに乗ってみるのも悪くないよ、ほーたろーと千反田さん?」
「な、里志…おまえ面白がってるだろ」
「ふ、福部さん」

 僕の意図に流石の鈍い千反田さんも気付いたのか顔を赤くしている。

「ちょっとふくちゃん!ちーちゃんは折木になんか渡さないわよ!折木がするくらいなら私がする!」

 すると意外な事に、摩耶花がつかつかと千反田さんの横に立ち、頬にぶちゅっとキスをぶちかました。

「ま、摩耶花さん!」
「へへ、ちーちゃんには日頃お世話になってるし、折木にされちゃうくらいなら私が感謝のキスの一つや二つしちゃうんだから!」

 摩耶花も流石に少し恥ずかしかったのか照れたようにはにかんで笑った。

「残念だったね、ほーたろー」
「うるさい、お前、人をからかいすぎだ」

 だって楽しいじゃないか。そう笑うと、そんな僕に、奉太郎は飽きれたようで、ため息をひとつ吐いた。


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基本的に仲良しな古典部が好き

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