健康第一!!

「今日は、親子丼つくったよ……っと、送信!」


心操くんとLINEを交換して以来、あれから毎日その日に作ったメニューを写真付きで送っている。

そうすると返ってくる「三日連続カレーはどうかと思うよ、飽きないの?」とか「最近油っこいものばっかだね、次はヘルシーなの作りなよ」とかのコメントに、なんだかダイエットのコーチみたいだなあ……なんて思い、クスリとして「はい、コーチ!」と返信する。


「『なんでコーチ?』……あはは、だって食生活管理されてるようなものだもんな〜」


以前心操くんとLINEを交換し、結構頻繁に自炊(まあ、たまにはカップラーメンだけど、そこは誤魔化して結構前に作ったものを送ったりしてる)をするようになって以来、最悪だった私の食生活が改善され体重がなんと5キロも減ったのだ!

心操コーチ、流石です……。

それに週に3回、心操くんと放課後に雄英の生徒出入り自由のトレーニングルームで筋トレしてるおかげで筋肉もついてきた。心操くん様々だ……!!


「あ、そろそろ買い物行かなきゃ……確か今日は肉と卵のタイムセールだったなあ」


部屋の壁に掛かったシンプルな時計はそろそろ17時を指そうとしている。タイムセールまで気にするようになって来たなんて、私も女子力と言うか嫁力が高くなって来たんじゃないか? ふふふ……。

まあ心操くんに言われたからだけどね!!



「えー、今から卵とお肉のタイムセールを始めまーす」


まるでやる気の感じられない合図とともに、タイムセール! と書かれているワゴンにダッシュで向かっていく主婦やおばちゃん──そして私。


「ちょっそれ今私が取ったわよ!」
「誰足踏んだの!!」
「いたっ……ちょ、痛い!」
「どきなさい!!」


まさに戦場。
雄英とは少し違った怖さだ。

そして私は見事その日の戦利品をたくさん買うことができ、良い気分で帰宅をしようとしたところで、ドリンクコーナーでウロウロしているバッサバッサした紫頭を見かけた。

……心操くんだ。
そう言えば心操くんもこのスーパー利用してたんだっけ……まあ言ってしまえば、私と心操くんが仲良くなったきっかけもこのスーパーだし。でもあれ以来あんまり合わなかったな……なんでだろ?


「心操くん」
「っ!?」
「……驚きすぎー」
「気配殺して後ろに立つな」
「ごめんごめーん、心操くんも買い物?」
「……ああ、まあね」


後ろから「わっ!!」って言ってちょっと肩を大げさに叩いただけなのに、結構びっくりされたな。そして不機嫌オーラが漂っている、誠にすいませんでした。


「めっちゃカゴに天然水入ってる。重そー」


カゴの中に数える限り、5〜6本は入っている。しかもそれ全部が1番大きなサイズなため、カゴの中に二段重ねで入っていた。重そうだ。


「なに、持ってくれるの?」
「そんなわけあると思う?」
「知ってた」


というか持つのって男の方じゃない? なんで私が持ってくれると思ったんだ心操くん……。

「肉と卵か……」心操くんが私の買い物カゴの中身をじっと見ながら呟くようにぼそっと言う。「あっ、さっきやってたタイムセール?」


「そう、さっき戦って来たの。これは今日の戦利品! 野菜は家にあるから、今日はすき焼きにするんだ。良いでしょー!」
「へえ、すき焼きか……いいね。今日は親が2人とも深夜まで帰ってこないらしいから、夕飯どうしようかなって……」
「え、じゃあうち来る? 心操くんには色々とお世話になってるし、夕飯くらい作るよ?」


突如訪れた無言。……えっなに、私今なんか変なこと言った? 確かこう言うのってフランス(だっけ?)あたりのことわざで言う「天使が通った」状態だよね。えっと……喋ろ?


「あの、なんで沈黙……」
「苗字さんってバカなの?」
「っえ!? 私今結構傷負ったよ……?」
「……普通、一人暮らしなのに男入れないでしょ」
「え? 心操くんはほら……男って言うか……主婦仲間? コーチ? みたいな感じだしオッケー!」
「…………はあ」
「なんで溜め息……」


ビシッとサムズアップで決めてみたものの、心操くんには効果がなく、溜め息で返された。


「じゃあ、お言葉に甘えて行くよ」



***


「うちはここね、角っこなの。いいでしょ」
「マンションなんだね、アパート想像してた」
「……なにが言いたいんだ?」
「いや別に、お邪魔します」


そう言えば引っ越してから男の子を家に入れるのって初めてだなー、なんて思いながら靴を脱いで部屋の明かりを点ける。

昨日何となく部屋を片付けたい気分になったんだよな、何故か。そしたら今日心操くんを家に呼ぶことになったんだもん……良かったぁいつもの汚い部屋を見られなくて!


「意外と部屋綺麗なんだね」
「意外とってなんだよ、意外とって」


……あっぶない。
これで汚かったらまたバカにされてしまうところだった。セーフ、セーフ……!!


「んじゃさっそく作るから、テキトーに座って待ってて。テレビでも付ける?」
「……ん、今の時間なにやってたっけ……」


心操くんがテレビを見ているうちに作っちゃおっと。ふふふ、日々私の料理スキルは上がっており、止まることを知らないのだ……!

いつも使っている紺色のエプロンを着て、テレビをぼーっとしながら見ている心操くんを一瞥する。

食って驚け!



「心操くん、出来たよ」
「おお……いい匂いする」
「でしょー!」


ぐつぐつ煮えたすき焼きからはいい匂いがプンプンして、程よく食欲をそそる。

卵をといたものを入れた茶碗を二枚テーブルに置き、箸は……私が使ってるのしか無いけど、まあ洗ってるから大丈夫でしょってことでそれを置く。


「味、どう?」
「ああ、美味しいよ」
「良かったー口に合って」


なんか今、夫婦っぽくなかった?

……いやいやいや、ないわ! ない!!


「いや、ほんと美味しいよ。毎日うちに来て、三食作って欲しいくらい美味しい」
「え? そっそんなに美味しい? 照れる〜」
「……苗字さんって、ときどき鈍いのかバカなのか分かんないよね」
「なっ、どういう意味!?」


人の飯を食っておいて!


「毎日三食作ってってさ、普通告白でしょ」
「……………へ」
「真っ赤だね」


…………。

顔が火を吹いた。
一気に顔に熱が集まり、自分でも今絶対顔赤くなってるだろうなって分かるくらい赤くなっていると思う。

告白? え、って言うか心操くんって私のこと好きだったの? いやいやいや、初耳! いやっ普通そんなこと本人に言わないかって言うかこの空気どうしよう!?


「…………えっとですね」
「……返事は?」
「ううううんんん」
「イエスかノーかでいいよ」


いや……うん、まあ……さ?


「イエス……で」


その後の心操くんの「してやった」と言いたげな顔を見て、私はあまりの恥ずかしさにテーブルに突っ伏したのだった。

おでこ盛大にぶつけたけど。痛い。


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