走るエロス
カタン、と感情とは裏腹に柔らかく立ち上がって慶次に一瞥くれてやる。
どいつもこいつも無駄に整った面しやがって…鼻の骨でも折ってやんなきゃ調和とれないな、ボキンと一発かましてやろうか。(なお骨を折れるほどの筋力が俺にあるかは不明)
それ以上慶次に目線を注ぐことなく俺は歩を進め、さっきの女の子の横にそっと寄り添っうように立つ。
『俺、慶次に嫉妬してたんだけどな。』
「慶次様に…?その、どういう…」
『キミが可愛いから、俺も話したくって。』
くい、と首を傾げて故意に人懐っこく笑ってみせると…
っしゃーおらーっ!
案の定!赤面するじゃあないか女の子。
やっぱり俺の顔は戦国乱世にも通用するんじゃん!キタコレヾ(゚ω゚)ノ キタコレー♪ヤッホッホーーFOOO!!!
上機嫌になった俺は彼女のトレンチを奪って、またにっこり笑顔を見せつける。
『お仕事手伝わせて?あがったら晩飯付き合ってよ。』
「あっ、あの……困ります…!」
『…迷惑?』
「いえっ、そ、そういう訳では…」
『ほんと? 嬉しい。俺こう見えてスゲー働くから、見てて!』
団子屋の手伝いに比べたら温い温い!あれは死闘だったよ。パなかった…
にしても客少なーい!やり甲斐ないよアピールポイント少なめだよー!
客引きしにいこうかな…効果絶大だからな立証済みだから覚悟しろォ!!
と早速がんばろうとした瞬間、何かが立ち塞がった。え、固い。すごい、肉壁が。
『コンクリマン退けて。』
「俺が先約だろっ、何してるんだよ!」
『約束してないだろ、お前が勝手に攫っただけで!沙弥たちと甘いモン食いたかったのに、邪魔したの怒ってるよ俺。』
「だって俺、遠目にみた瞬間からずっと、名前に惹かれてんだ!!」
落 ち つ け や 。
彼女に恋敵だっつう認識させて俺から引き離すつもりですかテメーやり方がねちっこいな。
いやでももしそうなら私ホモです宣言で墓穴掘ったことになるんだよな…
てことは、なに、マジ? また?
『ゴメンこれ、返す!今度手伝いにくるから、時間あけといて!!それじゃっ』
「きゃっ、…はぁ。」
トレンチを貰い受けた矢先なのに押し付けるように返して、走って店から逃げ出す。
これ以上おホモダチは要らねえんだよ! 真田みたいにピュアに純粋に男友達の関係であっちゃくれねえのか!!
『道わかんなああぁぁあい!!!!』
ただ第六感が命ずるままに走っています!
実際走り始めてから上り坂だって気づいて後悔してます!超絶辛いけど止まれません!
体育できるけど、俺の一番キライなのマット運動!そして二番目がマラソンうぅぅ!!
髪の毛弄ってないから走りやすいけどさ、だけどさ!後ろから聞こえる砂利を踏む音がすごい近いから焦るよね!?
「そっちは森だぜ?」
『っひい…!なんで横に並んでんのぉ?!』
「伊達に戦場駆け抜けてないってね!」
『っぬああぁあぁー!!!!!』
全力疾走じゃあぁぁ!!
森の精霊さん助けてえぇ!
…あ、森の精霊は小十郎さんなんだっけ。まあいいや助けてよ、ささっと助けなさいよぉ!
「まだ走んのかい?名前と一緒なら、散歩も楽しいってもんだねえ!」
『うひぃ!』
まだ隣にいるぅ!
もうなんなのコイツ…いい加減怖いってよりか疲れちゃったよ。
俺の全力疾走にこんな容易く付いてきちゃって、もう逃げ場ないじゃないか。
そうして俺は走るのをやめ、すぐそばにあった大木に凭れ掛かって上がった呼吸を落ち着かせる。
『っはぁ…は、』
「もうお疲れ?体力ねえなぁ。」
『チッ……!』
息が上がって言葉を吐くのもしんどいので、舌打ちと共に中指を突き立ててみせた。
肩で息をする俺をみて、慶次がさも愉快そうに笑う。無邪気さが憎いぜポニーテール…
こーいうとき男物の着物は緩められていいね。小十郎さんがいたらブチ切れられそうだけど。
『日蔭きもちいー…』
「こ、これって据え膳かな…!いただきます。」
『うわ、テメ、あんま触んな! 汗かいてんだろが。』
ぺたぺたして気持ち悪いヤメろ!
心なしか普段より拒否の激しい俺。
気持ちよけりゃ流されてしまうタイプではあるはずなんだけどさ、若いし筋肉パないし、見た目すげー男らしいし…友達としちゃ最高かなって思える訳だよ
でもそーいう現代と近いノリって、この時代じゃなくてもお前はホモだみたいに言われてる気分でさ!いや妄想だよ妄想だけど。
『そうだよ友達にね、友達になりましょーよ!』
「友情も大事だけど、アンタとは恋仲になりてえんだ。」
『道踏み外してもいいってか!』
「俺の道は俺の意思が繋いでく。常識に敷かれた道なんて、つまらねえよ!」
UZEEEEE!!!!!
俺だって他人と同じ人生歩みたくないとか常に刺激が欲しいとか、欲求こそあるよ気持ちはわかる。
でもそれぞれの欲求には、それを要求するに相応しい人物ってのがいると思う。そんでもっめ俺は性的な欲求を、男で満たそうとは思わないしさっきの返しは本当にウザい。
いやでも待てよ…… 根本から考えりゃ同性が普通じゃないなんて、常識に囚われてる良い例なんじゃないか?
刺激がほしけりゃバカになれーうぉううぉー♪とか歌ってた奴らが遥か昔にいたな。
なるほど。逃げ惑うくらいなら、バカになるのもいいんだろうか。
(俺が既にバカだからこんな考えに至ったんだな。/後日談)
『青姦はヤだ。ホテルいこ』
「ほてる?何処だ?」
『どっか室内入ろーぜって。ヤりたいんだろ』
情けなくもツルツルな太股をべろーり晒して、慶次の腰に腕を回して絡んでみる乗り気な#名前#である。
くっは、情けねえ〜〜ッ!
と内心嘆いてたら目の前には赤面する慶次の顔。
あれあれあれっ?
この方チャラ男に分類される人間よね?こんなん慣れっこじゃないわけ?
結構かわいいところあるじゃないの!
『わりとウブかね、慶次くん。』
「んな、寄ったら…!」
『あっはは、可愛…‥――ッ?!!』
何か、何か何か何かあぁぁああぁ!!!!
腹 に 当 た っ と る 。
ものっそいデカいのか当たってる。もしかしなくても政宗さんのよりデカいのでないのかとか思うくらいのが押してきてる。
待って、待ってね。
俺ね、だいぶ治ったんだ。ウンそう、お尻ね?
また裂けるんじゃないかなぁと思うんだけど、どうかな、そんな事ないかな。
そんなことありそうだなぁキャパシティオーバーだと思うなぁ俺!まいったなぁ!
今から逃げてもいいかな。
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