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カカオを求めて三千里
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2月14日がとうに過ぎて、ふと思い出す。

お菓子つくってる会社はウハウハ!俺みたいに女ウケいい男共もウハウハ!…な、その日。





戦国時代といえばバレンタインデーどころかチョコレートすらない。異国の文化すら浸透していない!開国してくださいよぉ〜おお〜ん…

実際さ、実際さ、辛いの。俺が実はもんのすごくカカオ愛してるから!毎日一袋のチョコレート!(ファミリーパック)

あんこ飽きたんじゃあぁぁ!!!
お多代ちゃんの最中は別じゃあぁぁ!!!!






『探せばある…やも。』

「なんの話だ?」

『んー、愛しい愛しいアノ子のお話です。名前は今日も城下にまいります!』

「Ahn…?遊郭かよ」

『違いますよアホねこの動く性欲は。』

「Sick joke...そこまで罵られなきゃならねえコト言ったか?」(酷え冗談だな)





エロガキは放置しとくとしよう。

ささっと城下行ってチョコを発掘してこよう!希望は薄いけど。カカオっていう存在がまだ日本に辿り着いていない可能性が大すぎるけど。
まぁ!可能性はゼロじゃない!!









――――――…




「まぁ、名前ちゃん。」

『里さん。あれ、みんなお揃いだね』

「名前ちゃん、先日ぶりやねえ。今日は何しに下りてきたんえ?」

『伝説のお菓子を探しに来たの。
バレンタインデーっていってね、俺のいた国ではちょっとした全国的行事なんだけど、思い出したから何となく!』

「ばれんたいん、でえ…? 何をする日なん?」

『女の子が好きな男の子に、チョコレートっていう異国のお菓子を送る日だよ。』




お里さんを筆頭に並ぶこの3人の女の人たちは俗にいう遊女っていうやつで、えらい煌びやかな里さんに至っては遊女の最高格である太夫についてる。

知り合った経緯はこうだ。
この里さんは他の太夫みたいに高飛車じゃなくとても気さくな人で(と、連れのロリっ子たちが言っていた)、駄菓子屋を手伝ってるときに話しかけてきてくれてさ!

上玉ァ…!とか思ってハッピー全開で話しまくってたら、実はすごい人だったの。その時だいぶ大人しい格好だったからなぁ… 遊女の私服ってギャップあっていいよね…






「そら素敵な行事やわ。ほならウチ、名前ちゃんにあげななぁ!」

『ほんと?!里さんに貰ったら勿体なくて食べれないなぁ。
それより、そっちは何してるの?』

「あちらさんがな、遊廓やのうて町を一緒したい言うんよ。お得意さんやし、しゃあおへんから出向いたんえ」

『へー…変な客もいるのなー、苦労するねえ。あ!こっそり護衛やったげよっか?』



護衛したところで負けますけどね。
むしろただのストーカーに成り下がって、見つかり次第バッサリいかれますけどね。

にしても外に連れ出すとか物騒だなぁ…里さんも太夫なんだしビシッと断っちゃえばいいのに。
ほんとお人好し!そこがいいんだけど!






「ほんま?嬉しなぁ…
そやけど心配おへんよ、よう知ったお人やから。」

「里姉の、コレですのやっ」




ひそっと小声で俺に小指を立てて見せるのは、まだ見習いでお手伝いさんみたいなモンなんだという沙弥ちゃん。

ちょっと!お父さん許さないよっ!
というか太夫さん特定の恋人とかオッケーなの?!いや応援するけど!羨ましい!
なになに逢い引きなの!あっ、お客さんじゃないのか?!もしかして今俺ナチュラルに嘘吐かれた…?

女ってこえぇぇ!!つか遊女こええぇえぇ!!!!





「沙弥、聞こえてますえ!慶次はそんなんちゃいますっ」

『‥‥慶次?慶次って、前田慶次?』

「何や、知ってはったん?お人が悪いわぁ」

『名前だけ知ってる。有名人だよねぇ…で、折角のお出掛けならなんで沙弥たちはついてきてんの。』

「相手さすんに一両は下らない吉里太夫の身体に、気安く触らせない為や!」




え、なに。することするなら金払えってことか。
えげつねえなロリっ子ども!

仕方ないっちゃ仕方ないのかな。本来なら太夫と町歩くなんて出来かねるし、了承されたとしても法外な額になるはずだしなぁ。





「ほんにもう、しょうもない話や…」

「そろそろ信頼してくれてもいーのになぁ。」

『…気付かないで会話続けるような野暮天じゃないからね、俺は。』



突如出現したロングというにもえらい長い髪を驚愕のポニーテールで結ってんのは、正に前田慶次その人。

すげー目立つなぁ、図体もでかいし。
ナチュラルに隣に立てるような見た目してないって自覚ないのかな…






『じゃあお邪魔しちゃあ悪いしお暇しますかね。ほら沙弥たちも、飯食いにいこ。』

「だって里姉がぁ…」

『いいから俺たち子供は団子でも食おうよ。そだ、おしるこ食べにいくっ?!』

「「行くー!!」」



俺より10こは年の小さな女の子と両手に手を繋いで、いざ出陣! 娘ができた気分である!

本当はしるこよりチョコ食べたいんだよなぁ…たらふくカカオ摂取したいんだよなぁ。






「待ちなよ。アンタいい奴…」
『あ、飯代くれ。』

「…かもね。」



小十郎さんから貰ったお小遣いはちまちま大事に使ってくんだい!

それに初対面なコイツにそこまでしてやる義理もない。里さんとデート出来んだから飯代くらい安いもんだろチクショー!





「なぁ、アンタ今日暇かい?」

『暇じゃないよ、沙弥たちと飯くってチョコ探すんだから。』

「ちょこ?」



コイツに説明するのめんどくっせとか思いつつ、さっき里さんにしたようにバレタインデーとチョコレートについての説明を淡々と伝えた。

そしたらもう食い付く食い付く。さっさとデート行けよ、女待たせんじゃねえ!ましてやお前里さん待たすとか何様だオラァ!時給発生さしたろかワレェ!!!





「へぇ…その話も含め、詳しく聴きてえな。これから茶でもどうだい?」

『里さんどーするつもりですかチャラ男さん。約束守らない奴、嫌いなんだよね俺』

「ウチはええんよ。元より一目会うてくるだけのつもりやさかい、気にせんで」

「ほら、里もこういってるし良いだろ?」




人よ恋せよとか言ってるくせに恋心は理解できてねーのかな慶次くん?!

それに俺、そこらの男子高生みたいに「女子と遊ぶより男子とツルむほうが楽しいわー」とか言わない思わない。女の子と遊ばなきゃやってけないし潤わないし発散できないし!

男の誘いより沙弥たちと飯食いたいよね!なんならギリ許容範囲みたいなっ!(冷静に考え直したらさすがに犯罪だし俺もちょっとちんちん勃つ自信がない)





『悪いけどご遠慮シマス。俺、野郎より女の子のが大切な生き物なので!』

「ははっ、いいねえ!男だねえ。
じゃあ一丁かっ拐いますか!!」

『のわっ?!ちょ、里さあああぁあん…‥‥――』





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