散らす花弁に祈りを込めて
『俺いますげー幸せだぁ…』
快便どころじゃないの、もうすんごく大胆だったんだから!いっつも謙虚な俺の…‥やめておこうか。
峠は越えたね。
ここはヘヴン。
空気椅子に耐え抜いた俺の筋肉が気だるそうに突っ張りやがるけど、何かそれすら達成感に変わっちゃう!気持っちイイィ!
『は〜〜…生きてるって素晴らしいなぁ…』
大きな幸せを噛み締めていると、何処からかもんのすごい負のオーラが…なんか市みたいな闇のオーラが…
あそこは何あるとこだっけ…?墓地とかだったらヤだな相当見たくない夢に出る。
お化けも幽霊も大嫌いだよ!リングとか呪怨とか見たら眠れねえのお!!!!
俺が恐る恐る、土をましまし踏みしめて進んでいくと…‥
あれ…ここ、畑?
なぜ畑から闇のオーラが?誰か死体でも埋めたんじゃなかろうな。良くないよそーいうの時代が時代だからって!ちゃんと山奥で燃やすとか海に沈めるとかして!
オーラの出所をもとにましましと再び歩を進めると、オーラの親方…
否、893の頭に遇った。
『‥‥半端なく堕ちてる。』
俺が相当奔放な事しでかしたから怒ってんなら頷けるけど、ここまでショック受けるような事はしてなくないですか?!
あ、でも男に手込めにされたんじゃ普通プライドに傷がつくってもんか… いやそれを言うなら俺とかズタズタだよ!突っ込まれたし!
まぁ取り敢えずは謝っとくのが…無難か?
『こじゅーろさ‥‥――?!』
「…、…、…、」
え、ちょっ、おま、何してんのおおお?!
似合いもしないマーガレット片手に花びらぷつぷつ抜いてさぁ!一枚抜く毎にコクコク頷いてなんか数えてる風にしてさぁ?!!
しかも何マーガレットってチョイス花弁多いんだよ!何気にスリル味わってんのかっ…
いやていうか引っくるめて、
花 占 い す ん な ???
「名前…いつから来てたんだ。」
俺の垂れ流しな気配すら気付かないほど集中してたんすか 花 占 い に 。
もう俺アナタへの密かな憧れとか跡形もなくズッタボロになってるよ…ギャップ萌えとかの範疇じゃないよ。
「おい、テメェ…」
すっかりハゲきったマーガレットを投げ捨てて、じりじりと俺に歩み寄る小十郎さん。
さっきまで堕ちてたよね?しおしおしてたよねええ?!!いきなり般若顔とかやってないよ、帰ってくださいいい!いや俺が帰りたい。
刺さるような、ていうか刺してくるんじゃないかっていう目線に居竦められて立ち尽くした俺を、突然にぬるい体温が包んだ。
‥‥‥ほぁ?
「俺が嫌いなのか…?」
『え、いや、は?』
何いってるのこの子。
どーしたらいいの俺。
急にあんな顔で寄ってきて抱き締められても、このまま絞め殺されるのではないかと思うから!ていうか現在進行形で思ってっからぁ!
えぇと、何でいきなり嫌いかとか訊かれてんだ俺は。
ん?‥‥‥待てよ。
花 占 い か ぁ !!!!!
しかもその結果を鵜呑みにしたのかこのおじさま…まるっきりアホだぞ大丈夫かキャラクターの崩壊にも程があるぞ。
思考回路停止するほどショックだったんか…それは悪いことをした。
『おばか、小十郎さんのお陰でいまこの戦国時代で俺が生きれてんすよ?
めっちゃ感謝してるし、大好きですよ!』
後頭部に腕を回して、宥めるようにオールバックで固められた頭を崩さない程度に撫で付ける。
そのまま俺よりも男臭い大きな身体を腕に納めてしまったのは、まったくの不本意で…
あーもう調子狂わせてくれるなぁ、どうも。
『さっきはごめんなさい。機嫌直し…のああああぁあぁぁっっ?!!?!』
「っるせえ…」
『ちょま、なに?!なに植えてんすか!ねええ!!!』
畑に緑色の生首がいっぱい生えてるんだけど!すごい渋くて濃ゆい顔してるし!
凛々しいとかの次元じゃないザビい素晴らしくザビい…!
昨日の朝に畑仕事かるく手伝ったけど、こんな物騒なもん生えてなかったよね?!いや生えてたら雑草と間違えちゃった〜テへ☆作戦で全滅させてるし!
『これ、食べんの…?』
「南蛮の野菜だからな、多少奇っ怪でも仕方ねえさ。見た目ヤバいもんほど美味えって言うだろ」
『レベルじゃないっすよ…戦の時にでも食ってみろ、戦わずして皆さんご臨終に違いない…!』
空気が変わったから抱き締めてんのも何だかなと思って身を離そうとしたら、小十郎さんの腕の力が強まった。
甘えているのかいこじゅさん…愛いヤツめ。
『甘えたさん、畑仕事は終わったんですか?』
「終えた。」
『じゃあ朝の続きしましょっか。』
「しねー。」
『え、今の“しない”?それとも“死ね”って言いました?』
「死んでくれても構わねえが前者だ。」
なんだ、エッチしたいんじゃないのか。突っ込むチャンスだと思ったのになあ…
小十郎さんとヤって気持ちよかったらセフレにしたい…筆頭とその右腕をセフレって俺大物すぎる。尻とちんこで天下取れそう。
本日の格言、
男 は 下 半 身 !
『あんまり嘘ばっか吐くと嫌いになります。』
「その時はぶった斬る。」
『ぶ、物騒だなぁ!脅しで繋げた絆なんて悲しいだけですよ……ちょっとカッコいい俺。』
やたらと甘えたモードな小十郎さんはそれから俺にべったりで、可愛い反面むっさくさ動きにくくてそろそろ邪魔である。
取り敢えずまあオールバックはデコチューがしやすいって事が判明したけど、男に突っ込むのが気持ちいかまでは不明なまんま。
快かったらバイになろっかなぁ…
「愛、故に…」
『ひっ…! 野菜つまんだでしょ!つまんだんでしょ?!食えそうだとか思って、ひょいぱくしたね?!!』
「ふ、ふふ…」
『織田の白髪みたいだからあぁぁ!!誰かっ、今すぐ下剤持ってきてええぇえぇ!!!!』
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