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ぼくは悪魔なんだから
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足場さえない、真っ白い空間。

まだ記憶に新しいその場所に佇むのは、やっぱりちょっと前に逢ったばかりの彼がいた。





『昨日ぶり。』

「‥‥‥‥。」



何故だかバツが悪そうに目を伏してる悪魔。

ついこの間理不尽に俺を異世界に吹っ飛ばしたときの能天気さは何処へいったのか、悪魔なら悪魔らしくしてればいいのに。

一向に沈黙を破りそうにない悪魔クンに痺れを切らして、俺が先に言葉を紡いだ。





『やってくれましたね。すっげー痛かった』

「‥‥‥僕、悪魔なんだ。」

『んな事知ってるわ、悪魔の所業でしかねーわ!しぬほどケツ痛かったし…もー感服するね、悪魔の鏡。』

「違う!僕は悪魔なんだからっ」




言ってる意味が全くもってわからん。

悪魔だから何だってんだ、悪魔は苦痛を与えて喜ぶ生き物だろ?だったら俺の言葉は褒め言葉じゃん。なんでそんな顔するの?

そらもっと胸張れよ。
俺は最高に苦しかったんだから、お前は大した悪魔だよ。

そう口にしようとしたけど彼の顔がみるみる悲痛に歪むもんだから、声にできずただ沈黙で言葉を促した。







「悪魔は人の心を惑わす者。僕たちに助けを求める人間が居ないよ〜に、人間を助ける悪魔も存在しない」




えらいぼんやりとした了見を得ない言葉が並べられ眉根をひっそり寄せたが、次いでく台詞にただただ耳を傾ける。



「だから僕はきみに罰もなにも与える立場じゃないし、そ〜してやる義理もない。」

『だったら何で俺が野郎に抱かれなきゃなんないの。』

「僕はあの世界を一切操作はしてないよ〜。あれは彼が望み、自らの意思で起こしたこ〜ど〜さ」

『は…? 猿飛が素で俺に欲情したって?』



痛々しい真実だなオイ…

だったら政宗も悪魔が仕掛けた悪戯じゃなくリアルに俺に懐いてるの?
嬉しいっちゃあ嬉しいけど…この世界きてからだぞ、男にどうこうされんのなんて!

戦国時代が特別ホモ多いってだけには到底思えないしな…どこまで本当なんだか。






『俺がここに来たことに理由はあるの?』

「僕もきみも退屈してた。僕は何かアクションを起こしてやりたくて〜、きみは起こして欲しくて…需要と供給のカンケ〜が成り立ったから飛ばしたまでだよ〜。」

『退屈ね…否定はしないけど。』



セフレという名の彼女ともマンネリ気味だし、先輩から借りたAVを見るにしたって女子高生の設定なのにやたら女優が年くってたりで軽く疲れてたんだ。

刺激が足りねえなーとか考えながらコンビニに向かってたら、反対側からホモップルが仲睦まじく手なんか繋いで歩ってきて…
人目憚れホモとか思いつつも、苦悩たっぷりで退屈しなさそうだなんて他人事に考えた。

まさかそんな些細な感情が反映されちゃってたりする?いやまさかまさか。





『ん、よっく判った!』

「うん、じゃ〜そゆことで!」

『ちょ?!』


まてまて待ちなさい!
まだ訊きたいこと山ほどあるんだっつの。

俺がどうすれば帰れんのかってことを始めとして、何しに野郎にモテちゃってんのかとか、まりもって言葉の由来とかそりゃもう沢山たーくさん!!





と叫ぶ間もなく俺は現実の世界へと引き戻されていく訳で…一番の疑問がこれぶっちゃけ、悪魔さん何しに出てきたんですかな訳でですね。

取り敢えず眩しい朝日にお出迎えされつつ起床を遂げた訳でもある。




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