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死期、待ち惚け
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奥州は日が沈むのが早い。



薄暗い空には太陽が沈むより先に顔を出したせっかちな月がぼんやりこっちを見ている。

この分だと星が出るのもそう遅くない。
街灯もないライトもない状況で日が沈みきるのは、この戦国乱世では避けたいところだ。

だんだんと足取りが速まる。








「おにーサン。」

『ハヒィ…!』



ビクリと大袈裟に肩が震えた。

おっ、おま、何時だと思ってんだ!
まだ五時前だけど良い子は寝る時間だ。早くない全っ然早くありません寝る子は育つんだから寝ろ!!

いやぁ小十郎…ビビったとき馬鹿にしてゴメン。これは逆ギレしたくもなるわ!




っと、話かけられたの忘れてた。
ていうか驚かされたっていう憎しみのあまりシカト実行するとこだった。

いま傷心なうなんだけどなぁ…




『なにか、』





振り向くと視界に飛び込むのは、一方的に見知った顔。
着物を着てる。でも隠せやしない。

こんな人間いねーもん!
こんな目に毒な髪色、染めなきゃ無理。







でもなんで、猿飛佐助が此処にいる?





「この道通るってことは城に用があるんでしょー?俺もなんだ。一緒に行かない?」

『あの…おれは、』

「早くしないと暗くなっちまうぜ?ほらほら」




嘘だ。




目的は見えないけどコイツは城なんて一人で行ける。俺に話かけるのは他でもなく、用ってのが俺にあるからだ。

いやもう絶対危ないじゃん。
忍から逃げられる可能性なんて俺のセフレが途絶えるほど虚無に等しい。

あっ、でもいま俺この時代にセフレいない!じゃあ可能性はゼロじゃない?!





『俺、道に迷ったんです。この道ってお城に繋がってるんですか?』

「何だ、俺の勘違いか。ごめんねー」

『いえ、助かりました。
それじゃ、道中お気を付けて』

「うん、アンタも気ィ付なよ。














此処らへん、忍がウロついてるからさ。」






首に冷たい感触。

見えないけど何かしら切れる物体だよねコレ!ちょっ、いますぐ銃刀法を施行してくれ!おまわりさーん!

怖くて唾も飲めないんだけど!喉仏動かしたらヤバいんじゃないのどうなの?!





「アンタの目的は何?旦那に取り入って、何を企んでる。」




旦那ってことは、真田だ?
真田と一緒にいたから俺がこんな状況に陥ってんの?

いやでも端から見ても普通に仲良しさんだったよね。悪いことしてないよね?
もしかして仲良しさんだった事が悪い
の?





「竜の旦那もやってくれるよね…」

『なに、いってんの…』

「まったく幻滅しちゃうよ。所詮は一城の主ってワケか」





いやいやいやいや。
勘違いで俺に刃物向けちゃってるお前に幻滅一直線だよ!焦って唾溜まりまくってんのいい加減飲み込みたいから刃物しまってよ。

相手から自分の表情が窺えないのを良いことに、俺は渾身の呆れた顔をみせる。







と、その刹那。
とっと飛びましたあぁぁ!!

浮いてる!浮いてる!!
おま、ぜってー離すなよ猿!

あっ猿だと秀吉になっちゃうのか…佐助のが遥かに猿っぽくないかなー、秀吉ってウッホッホ系でしょ。

とか考えてる場合じゃない!





『わ、あぶっ!うおわ!!』

「ちょっと肌切れるよ。」

『あでででで!めっちゃ切れてるリアル葉っぱカッターなんだけどぉ!?』






俺を抱えたまま木々を転々と跳び移り、着地した先は森のド真ん中。

木の上から滑るように降りてくる際に殊更増えてしまった大量の切り傷。
ほんっと痛い容赦ない!

この着流し上質なのに解れまくってボロボロだし…あの五着で一番のお気に入りだったんだぞコノヤロー!!

これは小十郎さんに説教くらうな…
うわ想像するとヤバい、普通にこんな猿より怖いんだけどぉぉ!







『今度は何してんの。』

「逃げられちゃ困るからね。」

『こんな樹海で逃げたらそれこそ餓死だ。』




縛られたらもう抵抗する気が失せた。

俺は武将サン達みたいに超人的な力なんて持ち合わせちゃいないし、ただちょっとだけ見た目の良い女好き。

その俺がこんな目に遇ってる意味すら未だ判んないし、勘違いでここまでしてくる猿は馬鹿としか。








『楽しくない。なんっも楽しくない』

「はぁ?」

『下らない。帰りたい』

「‥‥アンタ、俺様を馬鹿にしてるのか?」





勿論命は惜しいし、自分の身も可愛い。
すげー怖いし、逃げてどうにかなるとも思わないけど今すぐ逃げ出したい。






でもこんな時こそ思い出せ!


ここを見事生き長らえて進んで進んで進んだら、濃姫に逢えるかも知れないんだ!
もし明智に信長が殺された後だったらどうする!未亡人になった彼女に、俺はもうアタックあるのみですよ俺はァ!

押せあ押せあぁぁ!!!







「何いきなりハァハァしてんの…?」

『ちょっと興奮しますた。』

「殺される事にか?参ったねこりゃ、とんだ変態だ。」

『断じて違うから!』





まず今、俺に出来ることは只一つ!


色 仕 掛 け 。


これが通用したら心から猿を軽蔑しそうだけど、逃げられたら二度と会わないしその辺りはどうでもいい。
でもゲームしてる限り思うのは、どーせかすがにラブどっきゅんなんだろうな…

『かすがは謙信様に夢中なんだよバーカバーカ!』







(゚ロ゚)



俺いま声に出した?










「アンタ、ほんと何者?」

『っぐ、』




髪の毛を容赦なく鷲掴みにされ否応なく顔を見合わせられる。

プツン、て感覚。
あぁ抜けたなって。






『図星だからって熱くなんなよ…忍だろ?』

「何を知ってる?全部吐きな」

『なんにも、』

「…逸物引き千切られたくなかったら、さっさと言った方がいいよ。」





力任せに、褌が引き千切られる。
いま思いっきり布が喰い込んできたから一緒にナニももげたんじゃないかと思った!!!

布切れと化したそれがハラリと地面に落ちるよりも先に、俺のモノがぬくい温度に包まれる。それは他でもなく、佐助の手。

強張るな、俺の身体。







『ひと思いに取っちゃってー。性転換しようか悩んでたところなのアタイ』

「アンタ、いーい身体してるねえ…」

『いいチンコだからって千切るの…嫉妬でこういう事するのは良くないと思う。』

「その余裕、いつまで保つか。」





余裕なんてねーよ!
いっぱいおっぱいだよ!
おっぱいいっぱいは幸せすぎるよ!!



あーああぁまた脱線した!こーいうこと考えてる俺ってもしかして余裕なの?!

いやいやいや本能的に嫌なこと考えないようにしてるよな現実逃避大好き!







『具体的になにを吐かせたいの?』

「…もう何も言わなくていいよ。俺の任務はアンタを処理する事、それだけだ。」

『あ、ウィッス。
(嘘言って誤魔化す作戦失敗!)』




俺のナニを掴む手は行動を起こさない。

それが逆に恐ろしいってもんで、いつ握り潰されるか内心ビクビクなんだけど。




髪を上で束ねるようにして握ってた拳が開かれ、頭がカクンと頷垂れる。

佐助は離したその手で俺の帯を外して着流しを脱がせたけど、何せ腕が縄でくくられてるから、着流しが地面に落ちることはなく手首に引っ掛かった。





『大した趣味だな。』

「アンタの身体が俺様を誘ってんだよ。」

『男なんか誘うか。非生産的、興味ない』





くそ、おれ震えてる。

男に突っ込まれてそのまま殺されるなんて、やってくれるわ悪魔クン…最高の屈辱。





『(…だったら、舌噛んで死んだ方がずっとマシ。)』




コク、と生唾を飲み込んで大口を開けた。舌をべろりと垂らして…次でこの世とはオサラバだ。

伊達軍のみんなに礼も言えなかったし、真田との約束も俺から破っちまう…


ごめんな。











「ッだあ―――!!!」




あ、ゴリってゆった。
すごい気持ち悪い。

ノリのまま死んでやろうとしたのに、指突っ込まれて普通に阻止された。





「なに堂々と自害しようとしてんの?!」

『うるせーお前に突っ込まれるくらいなら今死ぬ死なせろ。』

「駄目だよ。俺様の勃っちゃったし、アンタ殺して独りで自慰なんてしたくないしね」




ぐいと腰を押されて前に倒れそうになったから、目の前にあった木に両手をついた。

彼の片手は俺の口のなか。
やっと動き出したもう片方の手は初っ端からペースを上げて、潤滑剤なしでそのペースの扱きは結ッ構〜〜痛い。

しかもこの人、俺を殺す気だから遠慮なんてする気ないんだ。時折立てられる爪が容赦なく亀頭に喰い込む。





『あ゙、っぐ…ヒい、いでえ‥!』

「気持ちヨクないのー?もしかして不感症?」

『男で、勃‥ア、っんや!』

「快さそうではあるんだけどねー。」





和らいでく痛みは、不謹慎にも生理的に漏れ出す先走りのお陰に他ならない。

それでも勃たないナニに痺れを切らして、佐助は舌打ちと共に俺の尻に張り詰めたモノを当てがった。





『や゙っ、バッ…!ヤメ、』

「…――初ものはやっぱキツいね…っ!」




勢い付けにズンと押されたと思えば、尻に激痛と例えようのない違和感。

裂けた。

ニードルでピアッシングする音よりも直にクる細胞の千切れてく感覚も、内股を伝ってく生暖かい朱も、ただ不快感と涙を煽った。






『死なせ、アぎ…ぃ!しなっ、へ…』

「力まないでよ、イタイからさー。」

『ヒ、っゔ…』




前を掴む手が離れたと思うと、尻を平手で何度も叩かれる。俺の意思とは関係なしに一瞬緩んでまた強張る、無様な穴。

叩かれる度にズッズッと奥に割り入ってくる圧迫はひたすらに嘔吐感を促す。






「…っク、入ったよ。すごい締め付け‥!」

『‥っひ、ぐ…――』

「泣いてんの…?」

『ウ、っ‥‥!』

「‥‥‥。」




潤滑剤はきっと俺の血だ。噛みついた佐助の指も最もだが、鉄の臭いが鼻につく。

ピストン運動に励むことで身体が揺れる。
木に衝突するのを防ぐための腕の力すらもう絶えてしまいそうで、このまま命をも絶えろと願った。

幸い血を流し過ぎてか何なのか感覚神経が麻痺を起こしてくれている。死期が待ち遠しい。






『ごめ、な‥‥真田。』

「ハ、気持ちい…っく、あ!」

『約、そ‥うっぐ…ッ!』

「アンタ、最高…―――ッ!!」




ピストンが止んだ。
ふるっと佐助の身体が震えたら、ドクドクと雪崩れ込んでくる精液。

嗚呼。やっと、やっとだ、







『死ねる、‥のかぁ。』




きっと蚊の声とも満たない、惨めな声だ。

でも歓喜はなによりデカい。






『ご、めんね…かすがの、…』

「アンタ馬鹿か?! 俺様に何されたか判ってんのっ?」

『も、いい…‥済んだ、ハナシ。』







なぁ悪魔クン。

最初からこうするつもりだったのか?
だったらほんとに悪魔だね。天晴れだ。






でも幸せなこと沢山あったし、いっか。


おやすみ、おれ。





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