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愛犬ユッキーとおさんぽ
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おばあちゃんからそっと身を放すと、真田幸村のお義父さんみたいな厳しい眼差しがそれで良いのだと言っている。

まさか本気で嫉妬しているのかと彼の今後が少し不安になってしまった。




『じゃあね、また来るよ。』

「ムッ、どちらに向かわれるか?」

『しょっぱいもの食べたいし、煎餅でも買いに行きますけど…』

「それなら某が案内しよう!よい店を知っておるのだっ」




真田という名の犬に腕を引かれ段々と遠ざかりゆく駄菓子屋で、丁寧に頭を下げるおばあちゃんに大きく手を振った。

後ろ向きはあまりに危険な速度で俺の腕を引くこの犬は実に無邪気だ。

久々の散歩なのか?
なんで初対面の俺を引き連れてこんなにはしゃいでるんだ。ていうか何げに俺の腕掴んで歩ってるけどそこら辺は破廉恥じゃないのか。





「着いたでござる!」

『早っ?!ていうか、真田さんて甘いもの好きなんじゃないんですか?なんで煎餅の店なんか…』

「お舘様がお好きなのだ!
‥‥? その方、如何して某の好物を心得てござる。」



あら、墓欠掘った。

すんごい疑われてる。
手にしたジャーキーを中々与えてくれない飼い主に疑念を抱き始めた目線だ。




『あんだけ最中買っといて甘党じゃなかったら詐偽ですよ。』

「某、誰も騙してなどおらぬぅ!」

『ハイハイ素直な良い子でちゅねー。』

「‥‥い、良い子でござるか?」




馬鹿にしたつもりだったんだが、俺としたことが照れさせてしまった。

そんなきゅるんとした瞳はダメだ。
初めて出来たバイトの後輩がめちゃくちゃ良い子だったとき並に可愛いぞ。

伊達軍は強面のお兄さんばっかりだからなぁ… 絶対的に癒しキャラが足りないんだよ。
女中さんは忙しそうで話かけらんないし、政宗さんは無駄に傍に居たがるし…

いやー、可愛い。
認めるよ!真田は可愛い!






「時にお主、名は何と申すのだ?」

『ああ、名乗ってなかったっけ。
俺は苗字名前と申します。名前でいいすよ』

「名前殿でござるか…うむ、良い名だ!」

『真田さんこそ。幸村ってご自分で命名されたんですか?』

「むむう…某、名前殿に名を名乗ったでござろうか?」




俺ほんと馬鹿だなー。

相手が真田じゃなけりゃ殺されてるよ。刺客扱いですぐに首スッパンだよ。





『最中を買いにくるお客さんのこと、おばあちゃんに聞きました。』



ごめんねおばあちゃん!

俺の言い訳のためなんかに利用してほんとにごめん!今度駄菓子ドッカドカ売り捌くから許してね!?




「左様であったか。
何だか恥ずかしいでござるな…」

『あーホラ煎餅!煎餅食べましょっ』

「そうでござった!親父殿おおおおッ」



待ってたよーなんて煎餅屋の親父さんに出迎えられながら、最中より一回り小さな木箱と交換。あと一つ一番小さな木箱が残ってるんだけど、団子入れるにしちゃデカいよな…

手の甲ほどもある贅沢な大きさの焼きたて煎餅を一口頬張りながらそんなことを考えたけど、ヤバいこれ美味すぎ!


サクサクうぅぅ!
ふわふわあぁぁ!


別腹って煎餅でも言えるんだ…
親父さんに自分の幸せ加減をかなりのハイテンションで告げたら、嬉々としてもう一枚サービスしてくれた!もう良い人だらけじゃんヤダー!






「名前殿。某は団子を食わねばならぬ故、此処で失礼致す!」

『俺も行く!あ、行きますっ』

「うむ、ならば行こうぞ!」



食わねばならぬって…義務なのか。

だいぶ腹いっぱいだけど団子は食っときたい。市販のパックで売ってる団子しか食った事ないんだよなあ。

煎餅がこんなに美味いんだから団子が不味いわけがない!昂まるゥ!







『‥‥‥?』

「むっ、如何した?」

『いや、誰かに見られてた気がしたんだけど…気のせいです、行きましょ!』

「名前殿っ?!
手、手が…はっ、ははははっは」

『破廉恥じゃないです。真田さん歩くの早いんですよ、置いかれたら俺泣き喚きます。』

「こ、困るでござるぅ…」




繋げた手と手を穴があくほどに凝視してる。さっきは自分から腕引いてきたくせに… 腕ならいいの?手は駄目とかそーいう話?
基準がわかんねえわよ。

それにしてもウブな子からかうのって楽しい。ウブなフリしたむっつり助平じゃなくて、純粋にウブい子かわいい。

真田なら間違いなく純粋ウブだよなー。
政宗みたいに万年発情期じゃないし、後ろついてくる姿も愛犬みたいだし!



ん?


政宗といえば…ここ伊達の領地なんだよな。

駄菓子も煎餅も団子も行きつけって、おかしくね?



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