さよならアイデンティティ
締め方が判らず適当に巻き付けといたために、頼りなく緩んだ褌に手がかかる。
くっと息が詰まると同時に、政宗さんが怪訝そうに眉根を寄せてこっちを見た。
「あんだけ快がっといて勃ってねえってのは、どういう了見だ。」
『そりゃーそうですよ…』
俺は女の子がすき。
男を恋愛の対象として見たことなんてないし、見たくもない。
刺激には反応するけど、やっぱ女の子じゃないと勃たない訳で。
先走りで褌に小さな染みをつくった俺の自身は、力なく垂れたまま尖端から少しのカウパーを流すのみで。彼はそれを不快なんだか悔しいんだか判んない微妙な表情で見据えてた。
そうして暫く俺のちんちんと見つめあった後に、おもむろに自分のモノを披露してきたので殴りたい。
『こっち向けないでコワイ!』
「口でシろ。易いモンだろ?」
『どこがどう易いのか判らないし、俺相手にそんなフルボッキなのも判らないしホントコワイ。』
「…知ってたか?」
『なにを、』
「男同士ってのはな、お前が勃ってなくても出来るんだぜ。」
なにより恐ろしい真実を突き付けられた気がする。
同じレベルの衝撃の例えが見つからないくらい驚異的な事実だ。
男のおあずけの辛さは判る。痛いくらいにそれは理解してやれる… が!
いくら切羽詰まったからって強姦はよくないっていうか普通に許されないからね?! その後俺は敵わないと知っても全力で殺しにかかるからね!!?
でも政宗さん凄いラブアピール(なのかな)激しいし強引だしヤりかねない。
……うん。
『まず退けて。 座って、足開いて』
素直に従う姿に、ちょっとした優越感。でもこれより遥かにデカい優越感を今このヒトは感じてるんだろうな。
起き上がって、招くように開かれた彼の股ぐらに顔を寄せる。
なんて絵面なの… 目の前には膨れ上がった政宗さんのちんちんが…! うっうっ… なんだか酷く情けなくなってまいりました…
投げ遣りな気分で俺は彼自身を口に含み、そのまま一思いに咥え込む。
『ンぶ、‥ちゅ』
「なかなか、上手いじゃねえか…!」
『ぢゅぷ、ぢゅ、ぢゅる』
「くあ゙、う…名前っ」
俺だってなあ、伊達にセフレなんて作ってないんだよ…! (大変ややこしい日本語表現)
手が使えない分、首動かして舌と唇で扱かなきゃならないがシンドイ。
無駄にビッグサイズなのが尚更シンドイ。
それでも丹念に丹念に吸い上げて、先端から溢れるカウパーを掬い出すように舌を押し込ませて、乱れる政宗さんの息遣いに少しだけ興奮して。
『は、ンむ…ぴちゅ、』
「むり、む、‥ッ」
あら可愛い。
政宗さんはイく前兆に内股がブルリと震えるみたい。
シグナルが判明したのをいいことに、さっきからそれを合図にしてペースを緩めたり速めたりして遊んでいる。
もうイきたくてイきたくて仕方ないみたいで、左右に首振って懇願なんてしちゃって… あーあ!女だったら普通に勃ってんのになー!あーー!
ともあれ、いい仕返しになった。
気も済んだし楽にしてあげますか!
『ずっ…ぢゅぢゅっ、ぢゅ』
「や゙う‥っ、あああ!っア、ぐ…」
咥内に空気を含まず頬の肉で擦り上げながら根元から思いきり吸い上げれば、あっけなく欲が吐き出される。
びゅくびゅくと口のなかいっぱいに広がる生臭さに顔をしかめてから、布団の近くに重ねてあった懐紙に吐き出して捨てた。
肩で息をしてる政宗さんに精液臭いであろうことは承知で口内環境サイテーのくちびるを重ねると、腕をくくる帯を外してくれた。きちんと腰に巻き直して、また布団へ横になる。
疲れた。
明日の夜もこんなんされたら、次はこじゅさんの部屋に逃げ込もう。俺が息絶えかねない。
あぁ、にしても可愛かったなー…
待て。
待て待て待て待て。
ふ、寝不足さ。
頭が回っていないだけさ!
布団にすっぽり潜り込んで、今度は政宗さんもいっしょに潜り込んで、抱き枕代わりに腕を回した彼はやっぱり可愛くって。
いや、
いやいや幻覚だ。
かわいくない! 全然かわいくない!
朝起きたらきっと奔放な政宗サマに戻ってるさ… そうでなきゃ困る。
そうして俺は城下町ナンパ計画をすっかり忘れて、ゆっくりまったりのっそりと眠りについたとさ。
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