×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

ワールドイズマイン!
bookmark






夜になりました。

とっぷりと日も落ちて、明かりと言えばよく雛段とかに飾ってある提灯(ちょうちん)みたいなランプだけになってます。





武士に二言はなく(むしろあってほしかった)政宗さんの部屋で寝ることになりました。

城主サマだからといって変に煌びやかな部屋に住んでるってワケでもなく、ちょっと広めなごく普通の和室。
くるりと見渡せども、変わったところは一つしかありません。

そのひとつが俺としてはすごく大きな問題であります!







布団が一式しかない。


敷き忘れたのかなって思ったら枕はちゃんと二つあるし… 女中さんにお布団もう一式くださいって言ったら、既に釘を挿されていて 「駄目です」 と一蹴された。

夜寒いし人肌は恋しいけど、柔らかい感触が欲しい訳であってゴツゴツしたヤローの身体なんて安眠妨害以外の何物でもないよ!!






明日は町に下りていきたいなー…
お団子屋さんの看板娘とかいたらサイコーですね。奥州に貢献するため、俺も彼女と一緒にバイトしたい。

ククク!楽しみになってきた!
楽しみ過ぎて目が冴えてきた!!





『バカめ俺ェ!』




起きて待ってたらまるで俺が政宗さんに抱かれたがってるみたいかな?! いやでも先に寝てるってのも何か図々しい感じもする…!

でも俺いま警戒心MAXだから寝る気満々で布団に入ってるんだ。
彼が入る隙間すらないようにド真ん中に大の字で、ちゅーさえ許さないといううつ伏せ寝! は〜〜呼吸しんど!





ここは寝たフリしかない。

ああ、何で俺が睡眠という素晴らしい安らぎの時間に就くのに、こんな苦労しなきゃならないのだ! キィー!

ていうかむしろ俺が女中さんとこ夜這い行きたい。あっ、行きたい。









途端に襖が開いた。

物音を立てずにいたから俺が寝たと思ってか、すすすと緩やかに襖が動く。




『‥‥‥‥。』

「寝たのか。床(とこ)でまで態度のデケェHoneyだな」




余計なお世話ですー!誰がいつデカい態度とったっての?!

溜め息は聞こえたものの口調が酷く穏やかだったから、嫌味ったらしい意味ではないんだろう。

しかしこのヒト俺が布団占領してる中どうやって寝る気かな… 覆い被さるとかだったら鳩尾(みぞおち)ぶん殴る。







「Hey,名前。partyの時間だぜ」




うつ伏せに寝る俺の布団を剥ぎ取ると四つん這いで跨ってきやがる政宗さん。

寒い!寒い!と内心叫びながらも俺は寝ているんだと言い聞かせて耐える。そりゃもうひたすら耐える。




すると彼はフッと笑ったような息を吐いて、べろりと耳の裏っ側を舐めた。

うああああ!!! こいつ絶対耳フェチだ城に来たときも耳責められたしぞわぞぞわあああ!!



というか、絶対気付いてるな?






どいつもこいつも勘が鋭い。
気付いたくせに俺を試すみたいな行動してくる。こじゅさんとかこじゅさんとか。

でもそういうときは、俺が悪魔クンに代わってお仕置きをしまーす! 撲滅天使名前く〜〜ん!







勢い任せに片足を後ろに上げる。それはもうストッパーがなければ足攣っちゃうくらい思いっきり。

そして重要なストッパーの役目を果たしてくれるのが、政宗さんの股間である。こーれはイタイである。





「っぐが!!」

『あれあれ〜〜? なんで俺の上に政宗さんがいるんですかぁ〜??』

「く、テメェ名前…」

『股関押さえながら睨まれましてもね。さ、退けてください。』





体を半回転させて彼の方に向き直ると、悶えている姿を余所に退けてくれと肩を押し遣った。
そうした俺の腕を彼がおもむろに掴む。

おいさっきまで股間触ってた手だろソレ!







「Hey. この城の主が誰だか、分かってんのか?」




ひえっ…!
おこぷん…!!




「俺を拒めば、反逆罪で死ぬコトだってある。そいつを踏まえた上で行動するこったな」




え、ええ〜〜…




政宗さんってこんなヤツ? 権力にものを言わせちゃうような薄汚い野郎なの?!

まさか、快く此処に留まることを了承してくれたのは俺をオナペットに見立ててか。俺はただの性欲処理器だってか…!

それはもう、幻滅とかってレベルじゃない。嫌悪、憎悪、NO!







『サイテー。』

「Ahn?」

『城主になると人権とか無視していいの? ジャイアニズムなの? そんな人間が天下人目指してるとか怖すぎ。』

「Ha! 言うねえ、Kitty」





誰がキティちゃんだ。

あ〜〜真ん前でクソみたいな脅し文句言われてもまだ信じたくない気持ちが勝ってるなんて俺のバカバカバカ!

まだ出逢って一日目。
俺は今日一日で、このヒトの優しさに触れすぎたんだろう。






『言うこと聞きたくないので城を出ます。お世話になりました。』




肘でずりずりと後退して政宗の下から抜け出すと、端に畳んでおいた衣服を小脇に抱え込む。

くるりと彼の方へ振り向くけど、目線は出口の襖に一直線。

俺の頭がいまだに事態を把握しようとしてくれなくって、彼の言葉はただのジョークだ、また俺をからかおうとしてなんて現実逃避もいいとこだ。




.


<< >>

[戻る]