※10話ネタ


青の輪郭が、暁にぼやける。
まるで存在そのものが幻のように、その色まで儚い。優しい桃色は消え、また、静寂。


アイツは振り向かない。
きっと、振り向きやしない。


(ああ、喪失感)


良かったさと、アイツはどこか慈愛に満ちた顔で笑っていた。顔が見えなくても分かった。たまに俺とじゃれてる時とかも、同じような顔で微笑んでたから。


その顔は、その優しさは、その、愛は。


(俺のだったのにな)



もう今は、全部ユイのなんだな。ユイの、ユイだけの、


(ああ、喪失感)


今さら気付いた。でも気付いた瞬間に終わってしまった。恋と呼ぶには、不謹慎で、少しばかり足りない想い。



ああでも俺、ちゃんと恋、出来たんだ。生前には思いつきもしなかった。ただ夢へと、ひた走って。

付き合ってやる、そう俺に言ってくれた。それだけで十分だった。その気持ちだけで、俺には十分。


黄昏の時間が終わり、アイツはこちらに踵をかえそうと、


「っ、…音無?」


気が付いた時にはもう、俺はアイツの腕を掴んでいて、振り向く素振りを見せれば腕をギュッと握ってそれを制す。一度やればアイツも分かったようで、それ以上振り向こうとはせず、また俺たちを照らす夕日を眺め続けた。


振り向かないでくれ。終わりにするから。そのままずっと、お前はユイを想っていて。ほんとは、お前のその背中にすがりつきたかったけど。だから、振り向かないでくれ。




「日向」
「…なんだ?」
「お前は、」
「ん、」
「最高の、親友だよ」




ちいさな恋の終わりに



(ありがとう)
(好き、でした)



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