友達 T



会議室で先生の説明をあらかた聞いた後、これから1年間過ごすことになる教室にやってきた。
札には1-B。なんというか、ごく平均的なクラスらしい。

···え?なんでらしいなのかって?だってなんなチワワみたいなのいっぱいいるし。なんかまぶしいし。俺からしたら全然平均的なクラスじゃないことは確かなのである。


「今日は新しいお友達がやってきまーす。じゃあ入ってこーい」
「は、はーい…」


先生になんとも適当に呼ばれ、ゆっくりとドアを開ける。
すると、一気に教室中の目が俺に向けられた。そしてその眼には、明らかな落胆の二文字。
···うんうん、そうだよなー転校生が来るって言われたらやっぱなんとなくイケメンか可愛いの想像しちゃうよなーわかるよ、その気持ち。

カーッ!悪かったな平凡で!お前らの顔が良すぎるんだよバカ!そんな目で見てくんな!


「えと、ま、前川宗太です。親の都合できょうから外部の学校から転入してきました。よろしくお願いします」


俺が周りの圧というか、むしろ無さすぎる期待というか、なんかそんなものに絶えながら短い自己紹介を終えると、まばらな拍手が返ってくる。
ふむ。いいか、社会に出たらな、どうでもいいことにでもきちんと誠意を込めて拍手しないとダメなんだ。わかったらせめてきちんとこっちを見て拍手してくれ。頼むから。

溜息をつきながら周りを見渡す。

小動物みたいに小さいやつらがこそこそと何やら話しいるのが見える。
ん?なんだなんだ、俺がイケメンすぎるってか?よせやぃ!照れるだろ!···はーーー···


「えー残念。期待しなきゃよかった」


あ、いまハッキリ聞こえた。すごいハッキリ聞こえた。やめて俺の幻想を打ち砕かないで。ほんとに!やめろ!泣くぞ!

ぎぎぎとちっこいのを睨みつけていると、その後ろの席のやつが目に入った。

机に頬図絵をついて興味なさそうに窓の外を見ている、これまた興味なさそうにあくびをしている男。
耳にかかるほどの長さの髪が顔にかかって、どんな顔なのかは確認出来ない。こいつ、拍手もせずになんなんだ。

さてはゆとりか?奇遇だな俺もゆとりだ。でも許せん。拍手しろ。俺を歓迎しろ!


「あーじゃあ、お前は笹井の後ろの席に座ってくれ」
「あ、はーい···ささい、·····笹井!?」
「なんだ?デカい声出して」


先生が驚いたように俺を見るが、俺はそんなこと気にもしないで、何かに弾かれたようにあの窓辺の退屈そうな男の元に走った


「───ひ、ひろうみ、広海だよな!」
「··は?なに───···って、···なんで宗太がここにいんの?」
「今日転入してきたんだよ!」


ぽかんと口を開けて驚く男に向かって、いぇい、と片手でピースをつくる。その男にしては珍しい呆けた表情に自然と頬が緩んだ。





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