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わたしはひろちゃんのことが好き






ひろちゃんは小さい頃から仲良しで、一人っ子のわたしにとってもお姉ちゃんみたいな存在であり、妹みたいな存在でもあった



ひろちゃんは6年生になってから、すごく女の子っぽくなった

中身は昔からの変わらないひろちゃんなんだけど、すらっと伸びた足とか、日に焼けたうなじとかが、とても女の子らしい
なんていうか、色っぽさがでてきた

ベリーショートの黒髪も、ひろちゃんにはとてもよく似合っていた



わたしは小さい頃から運動が得意なひろちゃんに憧れていた

生まれつき運動が苦手だったわたしは、ちょっと走っただけで息切れするし、かけっこはいつもビリだし、挙げ句の果てには派手に転んでしまう

だから、わたしにないものを持っているひろちゃんに憧れた


近所のいじめられっ子からわたしを守ってくれるのはひろちゃんだった
本当は怖くて怖くて泣きそうなくせに、わたしよりも臆病なくせに


いつもわたしの前で気丈に意地をはって、男の子と戦うひろちゃんに、いつしかわたしは恋していた



正確にいつから好きだったのかは覚えていないけど、小学校にあがる前からひろちゃんが大好きだった
幼稚園の頃の夢は、ひろちゃんと結婚すること


「はな、大きくなったらひろちゃんとけっこんする!!」

ママにそう言ったら、

「女の子同士じゃ結婚できないのよ?」

とやんわり諭された


この夢は、ずっと変わっていない







わたしは女の子らしくなり始めたひろちゃんを、少しやらしい目で見ることが増えた


いつもショートパンツを履くひろちゃんの、太ももの日焼けのあと
薄いTシャツの胸の膨らみ
少し伸びた横髪を掻き上げる仕草
わたしのことを呼ぶその、くちびる


なんて疚しいことを考えているのか、わたしはとても動揺したけど、馬鹿じゃないわたしの頭はすぐに結論を導きだした


あ、わたし、女の子が好きなんだ


ひろちゃんのことをやらしい目で見てしまうのは、そういうことだったんだ




ひろちゃんは最近わたしといるとき、意味もなくにこにこすることが多い


そこでもわたしの馬鹿じゃない頭は、ひろちゃんがわたしのことを好きなんじゃないかっていう夢みたいな結論を出した



だから、わたしは学校帰り、ひろちゃんに聞いた


『ひろちゃん、わたしのこと好きでしょ』


だけどひろちゃんはわたしから逃げてしまった
全速力で
後ろを一度も振り返らなかった


わたし、早とちりしちゃったんだ

女の子のこと好きでしょ、って聞かれて、ひろちゃん、わたしのこと怖くなったんだ


だから、逃げたんだ




わたしは泣いた

家に帰ってからずっと、ご飯を食べてる間もずっと


お父さんは出張でいないから、お母さんと二人だけの食卓だけど、お母さんは何も聞かないでくれた


ひろちゃんと仲直りしなきゃ
ずっと、友達のままでいい


そばにいたい



月曜日、泣きすぎで頭が痛くて起きれなかった
顔だって、ずっと泣いてたから真っ赤に腫れて、目も当てられない


でも、会いたい


ひろちゃんが帰ってくるんじゃないかなって時間を狙ってわたしはひろちゃんの家の前に立った


だけど、ひろちゃんはよく放課後に居残りして遊んでるから、まだ帰ってこないかも
そんなことさえかんがえられなかっただなんて

いつの間にかわたしはうずくまっていた

辛くて悲しくて、足に力が入らなかった


雪が降りそうだね



七つの子が冷たい風に乗って聞こえてくる


5時だったら、今学校を出たくらいかな…


わたしは顔を上げた



目の前には会いたかったひろちゃんが立っていた

なんで?

って思ったけど、よく考えたらここはひろちゃんの家だ



泣きそうな顔をしているひろちゃん

あぁ、泣き顔もかわいいな




「ひろちゃん」




ひろちゃんに伝えないと、わたしの気持ち


わたしは掠れた声で言った






「わたしね、大好きなの」



「ずっと前から、ひろちゃんが好き」




ひろちゃんはなんにも言わずにわたしに手を伸ばした

わたしもなんにも言わずにその手をにぎりしめた




ひろちゃん、みて



雪だよ


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