どのくらい走っただろうか。
まだ僕は疲れていない。
サラリーマンは一度脱落しそうになったがゴンが助けてあげた。
優しい子だなぁ。

キルアとゴンのお喋りを聞いてるうちにどうやら出口に到着したらしい。


「ヌメーレ湿原通称"詐欺師の塒"二次試験会場にはここを通って行かねばなりません」


湿原は生暖かくて湿気が多い。
あぁ、ここはあの星に似ている。
僕が生まれ育ったあの星。
太陽だって見えない。


「騙される事のないよう注意深く、しっかりと私のあとをついて来て下さい」

「おかしなこと言うぜ、騙されるとわかってて騙されるわけねーだろ」

思わず笑いそうになった。
きっとこのサラリーマンはとてもいい人か馬鹿のどっちかなのかな。
両方かもしれないね。

そうやって思ってる人の方が高確率で騙されるんだよ。



「嘘だ!そいつは嘘をついている!」

なんだろ、いきなり現れた傷だらけの男。
腕には試験官に似せたつもりの人面猿。
いや、胡散臭いなぁ。

なんて思っていたら男の顔面にトランプが刺さった。
試験官の手にも四枚。


そして、僕の手にも

「カグヤ、」

「 あー、大丈夫。怪我とかはしてないヨ」

目を見開くゴンとキルアに手をヒラヒラさせて見せる。
どうやら番犬は痺れを切らしたらしい。

「くっくっ、なるほどなるほど


よりによってハート。
まったく、愛が重いよ。
でもマテができないんじゃしつけ直さないとね。

「これで決定、そっちが本物だね

まぁ結果オーライ。
ヒソカのトランプで試験管がわかってまた走り出す。


「カグヤすごい!こんなに走ってるのに泥一つもつかないんだね!」

「僕の生まれた所は此処に似てるからネ。いつも雨ばかり降ってる所だったから」

「へぇ!カグヤとキルアって兄弟なの?」

「それは、」

「どっちでもいいだろ、ゴン、カグヤ。もっと前に行こう」

「うん。試験官見失うといけないもんね」

「いや、ピエロに襲われちゃうってことだヨ」

「そう。あいつ、殺したくてウズウズしてるから。霧に乗じてかなり殺るぜ」


ゴンが不思議そうにこちらを見ているのにキルアが気付いた。

「なんでそんなことわかるのって顔してるね、ゴン。なぜなら俺も同類だから。臭いでわかるのさ」

「同類…?あいつと?そんな風に見えないよ」

「それは俺が猫かぶってるからだよ。そのうちわかるさ」

ふーん、と納得したゴンは後方に振り返り仲間の名前を叫んだ。

「なぁカグヤ、俺達はやっぱり普通にはなれないのかな」

「そんなことないヨ、現にゴンと今一緒にいれるしね」

へらりと笑えばキルアも笑う。
こうやってどんどん友達が増えればいい。
僕みたいに世界を憎むことはないんだ。




キミの幸せを思う
prev / next

top
×