廃墟に戻っても僕の気分は落ちたままだった。
あの赤が消えない。

月の迷い子
姫君
罪人

どういうことだ?

あの老婆は迷いなく自決した。まるで伝え終われば死ぬのが当たり前のように。


「カグヤ、これは俺の見解なんだが…」

団長は顎に手を当てて重々しく口を開いた。

「あの老婆は自分のことを案内人と言っていた。それに気付いたかは知らんが老婆の髪色は月色だった」

「月色?」

「お前と同じ色だった。瞳はお前が至近距離で見ただろ?何色だった、俺の見解が正しければ濃い金か月色だっただろ?」


記憶をフル回転させ思い出す、あの時何故気付かなかったのか。
確かに老婆の瞳は月色だった。
濁っていたため金にも見えたが、間違いなく月色だった。


「つまりあの老婆も月の迷い子なんじゃないか?百年に一度堕とされると言っていた。次の迷い子にそれを伝えて使命を果たしたから…」

「自分で命を絶った…?」

「そうだ、そうすると辻褄があうだろ?」


あの老婆も月の迷い子?

僕と同じ…

でも

「ならどうして元の世界に戻らなかったのかな?」

「さぁ…死んでしまった今、聞き出す相手はいないからな。あのバーテンダーも何も知らなかったし」


あの老婆も僕も、罪人か。

「くっ…く、ッ…ははは、ははははは」

乾いた笑い声が響き渡る、団長は険しい顔で僕を見るがもうそんなのはどうでもよかった。


「何故笑う」

「団長も見ただろあの老婆の末路、僕もああなるじゃないの?てゆーか、百年生きた末に自決。ただただ虚しい最後だヨ」

熱くなる瞳を押さえる、もうあの赤は消えていた。いや消した。

僕はそんなモノに惑わされていられない。


「戻れないわけじゃない。返せば戻れると言っていた。何か方法があるはずだ。それを見つけ出す、絶対に」


それまではこの世界にいてやろう。

この大嫌いで憎い、修羅の世界で。



泣くように笑う
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