僕は先程シャルが話していた月兎の話をした。団長も知っていたようでテーブルにはその見出しの新聞が置いてあった。


「兎がどこからきたのか、か」

全てを聞いた団長は難しそうな表情を浮かべて僕を見る。黒い瞳は相変わらず闇のようだ。


「カグヤには言ってなかったが俺がお前を蜘蛛に入れたかった理由の一つにお前が異世界からきた可能性がある人間だとわかったからだ」

「なん、…あぁ。そういうことか」

問いかけるより早く理解した。この世界では情報が何より大切なんだ。蜘蛛の頭となればどんな情報でも得れるんだろうか。


「情報屋から買ったの?」

「そんな所だな。そいつはすぐに殺された。だからそれ以上の情報は引き出せなかった。俺にとっては異世界の人間というだけで十分だったからな」

「今となってはそうはいかないけどね、そいつが何処からその情報を得たのか…僕は知りたい」

「実はこの偽月兎が殺される数日前にある情報が入った。買うか買わないかはお前に聞いてからだと判断して保留中だがな。お前のような異世界から人が来ること、そして異世界に帰る方法を知っている老婆がいるらしい」

帰る方法を知っている?

落ち着いていた心臓がまたうるさく鳴り出した。帰れる。
僕は団長の隣に帰れる。

歓喜に震える僕を見ながら団長はその老婆の情報を話し出した。


「それでカグヤ、買うのか?」

「買うよ。デマでもいい」

「わかった。なら俺も同行しよう、お前のことだこれから行く気だろ?」

なんでついてくるんだと思いもしたが別に支障はないので二つ返事で許可をした。

団長と二人で出て行くのを他の団員に怪訝な目で見られたが背に腹は変えられない。





物語は進み出す
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