ーーーーポチャンーーーー


なんの音だろう。

み、ず…?

何だろうこの感覚は

まるで、ぬるま湯の中に沈むような。



カクンッと身体が揺れて吃驚した僕はパチリと瞼を開けた。


「……あ、り…?」

僕は自分の部屋のベットに寝てたはずなんだけどな。


ここは夢かな。

でもここ、見覚えあるよ。


綺麗に並ぶ本棚から一冊真っ黒な本を手に取り微笑む。


ここは…



「おい、誰だ。こんなとこで何してる」

この声は

ガチャリと頭に当てられた傘先に確信した。


「阿伏兎さん!」

「っあぁ!?おめーさんっ神夜か!?」


懐かしいその姿に思わず泣きそうになる、あぁ、ここは春雨の宇宙船の中だ。

僕が育った場所、僕の居場所。


あの人がいる場所。


「神夜、おめぇ今までいったいどこにいっちまってた?」

「団長のいない世界」

「はっ、お前の言うことはおったまげるぜ」

阿伏兎さんな僕の頭をワシワシ撫でる。


「三年ぶりの再会に質問攻めはヤボってもんよ、来な、団長は自室にいる」


団長に会える。

団長、僕の世界。

僕の全て。

やっと、やっとあなたに…


歩き出そうと足を踏み入れるとグラリと視界が揺れる。

な…んで…


「神夜…!?」

駆け寄ってくる阿伏兎さんの手を取ろうとした瞬間僕は消えた。



*


ーーーーここは…?

瞼を開けるとそこはいつもの僕の部屋。


夢、か

先程まで満ちていた幸福感が一気に絶望に呑まれる。


幸せな夢だった。


ギュッと拳を握り締めれば違和感。


手のひらには真っ黒な本が一冊。


これは

パラリと本をめくる、この文字はこの世界にはない。
この本はあの世界の



「…夢じゃない…」


僕の中の僕が笑った。



白昼夢症候群
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