大広間に着けば皆もう揃っていた。
お姫様抱っこされてる僕を見てミルキが少し笑った。


うん、後で一発殴ろう。

シルバさんは僕を降ろして椅子に座る。

その横にはキキョウさんもいる。




「さぁさぁカグヤさんも座って!」

キキョウさんに促され、僕は渋々椅子に座る事にした。



「じゃあパパ、お話して」

「あぁ、今日カルトがカグヤに婚約を迫った」


シルバさんの声に皆カルト君を見つめた。
ミルキさんは知っているからか退屈そうにジュースを飲んでいる。



「カルト!てめぇ!」

「カル、俺聞いてないよ」

「カグヤは僕の事嫌いじゃないって言ったもん。だから僕が貰う」



三人は声を荒げてバチバチと火花を散らしている。
あり?どうかしたの?

ミルキは我関せずとお菓子を食べてる。





「何、慌てる必要はない。お前等には全員チャンスがある」

シルバさんが穏やかな口調で三人を諭し、キキョウさんが笑顔で僕を見つめる。



「カグヤさん、好きな男性のタイプは?」

「はぁ…好きなタイプ」


女の子ならすぐ出て来るけど男になると難しいな。
まず考えた事もない。


僕には必要ない。

僕はただあの人の、


考えてみれば団長も男だ。
僕が誰よりも何よりも尊敬し、崇めている団長は男。


そうなれば僕の好みは団長なのだろうか。


何だか難しいな。



「…まぁ、強い人が好きかな」

「まぁまぁ!素晴らしいわ!そうよね、強い人は素敵だもの!」



間違った事は言ってない。

僕は闘う事が好きだ。
僕の中の夜兎の血は常に血に渇いている。
より貪欲に強さを求め、より強い対戦者を探している。


強い人は好きだ。
僕を楽しませる。


「…ーな、じゃあカグヤこの条件でいいか?」

「え、なに?」







いけない、いけない。







何も聞いてなかった。






わぁ、皆僕を見てる。
視線が痛いヨ





「えーっと…?」

「兄弟の中で勝ち抜き、お前を負かす事が出来た奴がお前の婚約者だ。異論はないな?」



どうしよう、シルバさんが何を言ってるのか理解不能だ。



「お前もそれなら問題ないだろ?婚約が嫌なら負けなければいい話だ。負ければ潔くそいつと婚約しろ」





こんやく?こんやく?
え、婚約?
まてまてまてまて
いつの間にそんな話に?



僕がゾルディック兄弟の誰かと?




「んー、どうしてこうなったのかな?」

「どうしたもこうしたも、皆お前を気に入ってる。皆お前を欲しがってる、だがお前にそんな気は無いだろうしその事でいちいち揉めていたら話が進まない」

ゾルディック家と僕はあくまで持ちつ持たれずな関係では?
飼い犬をさらに囲う気なのかな?


「だから公平にこうして条件を決めた、単純な話だ。強い者がお前を手に入れる事が出来る」

「カグヤさんとってもお強いもの!きっと立派な跡取りが生まれるわ!」

キキョウさんの「楽しみだわ!」と言う声がやけに頭に響いた。

僕に拒否権は無いのだろうか。

あぁ、負けない事が拒否権かな。



『女は大切にしないとね、やがて強い子を生むかもしれないから』



ふとキキョウさんの声とあの人の声が重なった。
僕が女の子を大切にし始めた切欠はあの人の影響だ。




「じゃあさっそくやろうか」

「え?」

イルミは僕の腕を掴みズルズルと引きずって歩き出す。



「やるって何を?」

「何って、闘うんでしょ?早く俺に負けて俺の子生んでよ」



イルミの言葉に僕はクラクラと目眩がした。
なんてワイルドなプロポーズ



僕の反対側の腕をキルアが掴んだ。



「イル兄離せよ!」


キルアは庇ってるのかもしれないけど両方から引っ張られ僕の身体はギリギリと悲鳴を上げている。

ゾルディック家の力は強い。

このままじゃ裂けるかも。


「イルミ兄様!まずは兄弟で闘ってからです!」

「何?カル?俺に勝てる気なの?」


あ、喧嘩が始まる空気になってきた。
こうなると面倒だ、巻き込まれる前に逃げたい。



目でシルバさんに助けを求めれば爽やかな笑みで親指を立てた。



この外道。

あぁ、神様。


願わくは僕に読書をする時間をお与え下さい。









始まる争奪戦
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