「おはようリンクス」
今私の目の前にはニコニコしたディゴリーが立っている。
大広間に行くだけだからと油断していた。
「おはようございますMr.ディゴリー」
他の生徒がいる手前、私もニコニコとしながら挨拶を言う。
あれから私はこの男、セドリック・ディゴリーに付きまとわれてる。
それも他の生徒がいる前で現れるため私は猫をかぶるしかない。
「やだなぁ、名前で呼んでって言ってるじゃないか」
「あら、ごめんなさいMr.ディゴリー」
「敬語もいらないよ」
傍目から見たらとても仲の良い間柄に見えるだろう。
最近私に嫌がらせが増えたのもきっとディゴリーのファンのせいだ。
迷惑でしかない。
「そんな失礼な事できませんわ。ではMr.ディゴリー、私朝食をとらなければならないので」
ディゴリーの横をさっと抜けようとすればまた腕を掴まれる。
「あの」
「キミ朝授業いれてる?」
「いえ、午後からですが…」
「ならちょうどいいね、行こうか」
ディゴリーは私と手を繋ぎ歩き始めた。
「ちょっと、ディゴリー!」
何考えてるのこの男?
今すぐ振り払いたいけど他の生徒もいる。
やむを得ず、私はディゴリーに連れて行かれた。
「で、何のためにわざわざ此処まで連れて来たわけ?朝食逃しちゃったじゃない」
わざわざ地下まで連れて来て、本当、何を考えてるの?
まぁ周りに生徒がいないから猫をかぶる必要もなくて楽だけど。
「今日はとてもいい天気じゃないか、湖の畔でピクニックをしよう」
ピクニック?
この人頭大丈夫かしら?
「お言葉ですがディゴリー、朝食の時間はもう終わったのよ。食糧がないんじゃ話になんないわ」
私がハンッと馬鹿にしたように笑ったのに対してディゴリーはニコニコと笑う。
「キミに特別に教えてあげるよ」
ディゴリーは壁に飾ってある絵画の梨を擽った。
すると梨はクスクスと笑いながら身を捩り、ドアノブに姿を変えた。
隠し扉、ね。
「ここはホグワーツの厨房さ」
ディゴリーが扉を開くと中では沢山のハウスエルフが仕事をしていた。
「バスケットにサンドイッチとスコーン、糖蜜パイにオススメのドリンクをいれてもらえる?」
「かしこまりました!旦那様!」
ハウスエルフはキーキー声をあげながら作業に取り掛かった。
「随分と慣れてるのね、ディゴリー」
と言うか常連かしら?
「ここはハッフルパフの一部の生徒しか知らないんだ、キミもあまり口外しないでくれたら嬉しいな」
ハウスエルフからバスケットを受け取り、ディゴリーはまた私の手を握り湖に歩き始めた。
「どうでもいいけど、手離してくれないかしら?」
「キミ、いつもウィーズリーの双子と手繋いでるじゃないか」
なに言ってるの?この男。
「あの二人は特別よ、と言うかなんで私が貴方とピクニックをしなきゃいけないのよ。何のメリットもないわ」
「僕は嬉しいけどなぁ」
「話聞いてた?貴方頭におがくずでも詰まってるんじゃないの?」
「厨房の場所と入り方がわかったじゃないか」
「それだけよ、今頃ジョージとフレッドが私を探してるわ」
私は湖に向かって石を投げた。
ディゴリーはへらへらして本当、ムカつくわ。
ちらりとディゴリーを見ればスコーンを片手にまたニコニコしている。
「何笑ってるのよ」
「グリフィンドールの姫君を独占してると思うと、なんだかね。優越感に浸れるよ」
「貴方が無理やりつれて来たんでしょ」
ハァと諦めの溜め息を吐き、私はバスケットからサンドイッチを出しパクりと食べた。
強引な紳士
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