元の場所になんて戻せません。


ルノーリーオークション。


通称、闇市場。


金や時間を持て余した貴族や政治家など

トップクラスの腐った人間が集まるオークション会場。


彼らは珍しいモノを好む。

例え違法になるモノだとしても彼らには通じない。



「紳士、淑女の皆様。お集まりいただき誠にありがとうございます。さっそく、今日の目玉商品を紹介致します。」


仮面をつけた黒服の男が壇上に上がり、ライトに照らされる。

男がパチンと指を鳴らすと大きな檻が運ばれてきた。


「それでは、御覧ください。」


パサリと布を取り払うと檻の中には小さな白銀がいた。


「トップシークレットのベリル族、何処に住んでるかもわからない、そんなベリル族の生きた雌猫!しかも滅多に現れない白、に銀が混ざった珍種に御座います。」



観客からざわめきが消える。
皆が壇上の檻の中の白銀に視線を向け息を呑む。


「見た目はまだ幼子で御座いますが、すぐに育ちますので育成もおすすめできます。いかがですか皆様、では10億ジェニーかr゛」



瞬間、
男の首が 空中に飛んだ。


悲鳴や喚声、
いろんな音が響いた後静寂が訪れた。


「団長、やっぱり此処にして正解だったよ。凄いや、宝の山さ」


金庫を抉じ開け、

嬉々としたシャルナークの声が辺りに漏れる。


「そうか。フィンクス、全部殺ったか」

「あぁ、手応えなさすぎでつまんねぇぜ。今シズクが掃除してるよ」

「そうか。」


クロロはちらりと金庫を見た後、
つまらなそうに歩き出す。


「あれ?団長ー?どこいくの?」

「金庫はお前等に任せる。俺は会場を見てくる。」

「りょーかいっ」


*


会場につくと一人、動いてる女の姿が見えた。

「シズク」

「あれ、団長。どうかしたんですか」

「金庫はシャル達に任せきた。お前も終わったら向かってくれ」

「わかりました」


クロロは血の一滴も残らない会場を見回し、


溜め息をついた。

飽きた訳ではない。


しかし、心の昂りが最近感じられないのだ。

古書を読んでもこの渇きは潤わない。


何か、

新しいモノを 見つけてみたい。



カタッ

すると、静寂が破られた。

クロロ以外に会場には誰もいないはずだ。

ふと、壇上を見上げる。

白銀のナニかが、そこにいた。



目が、 あった。


「…これは」

白銀の瞳に、魅せられた。

まるで時が止まったように身動きがとれない。


「…?」


ナニかは首を傾げ、ジッとクロロを見つめる。


「……ベリル族、か。」



脳裏に前にシャルが言っていた目玉商品を思い出す。


フィンクスの奴、

檻の中を見なかったのか。

男は檻を素手で抉じ開ける。

「お前、名は?」

「?」


白銀は言語がわからないのかまた首を傾げる。


「まだ言葉を覚えてないのか…」


クロロはどうしたものかと自分の頭に手を置く。



ギュッ


瞬間、白銀がクロロに抱き付いてきた。


「ッ………」


渇きが

潤った気がした



*


戻って来たクロロの腕には

白銀のモノが抱き抱えられていた。


「団長、何その白いの」

「女の子?でしょうか」

「商品か?」


三人は怪訝な顔で白銀とクロロを見つめる。



「………飼ってもいいだろ。」


ポツリ。

小さくクロロが呟いた。



「え?」

「は?」


「……旅団で駄目なら、俺が個人で育てるが…」


真面目な顔で白銀を撫でながら言う。

実に異様な景色である。


「団長、正気?」

「あぁ、俺は猫アレルギーも持ってないし…」

「いやそうじゃなくて、」

「可愛いー」

シャルナークを遮り、シズクが白銀の髪を撫でる。


「に」

刹那、限りなく小さいが鈴を転がしたような音が聞こえた。

「…ちゃんと声も出せるな、よし帰るぞ。」

白銀を抱きながら歩き出したクロロの背中はどこか嬉々としていた。


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