ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が医務室に入るとベットに横たわるジュリアに縋るようにドラコが手を握っていた。


「ジュリアから離れろマルフォイッ!」


ロンがドラコに掴みかかる。

いつもなら抵抗するはずなのにドラコは呆然とジュリアを見つめていた。


「…ジュリアの怪我…どうなの…?」

訝しげにドラコを見ながらハーマイオニーがソッと尋ねる。


「マダム・ポンフリーが治療を…、今は寝てるだけだ。…でも、傷痕は消せなかった…」


ポツリポツリと話すドラコにゆっくりとハリーが近付いた。


「…ジュリアから離れろマルフォイ。じゃなきゃ、僕はキミに何をするかわからない」



酷く低い、怒りを孕んだ声が医務室に響く。


ハリーの腕は怒りでワナワナと震え今にもドラコを殴り飛ばしそうだ。


「…いっそ…、殴ってくれ」


ドラコは虚ろな瞳でハリーを見た。


「頼む…、殴ってくれ。僕を罵れ。」


そうでもしないと、自分の不甲斐なさに気が触れてしまいそうだ…。


「…やめておくよ、殴って欲しい奴をわざわざ殴ってやるほど僕は優しくない」


ハリーはドラコから手を離すと近くの椅子に腰かけた。


4人が沈黙に包まれながら、穏やかな表情で寝ているジュリアを眺めていれば荒々しく医務室の扉が開いた。



「「ジュリエットが大怪我したってのは本当か!?」」


フレッドとジョージは珍しく焦った様子で寝ているジュリアに近付いた。


「シッ!二人とも静かにしないとマダムに追い出されるわよ!」

「何で二人ともここにいるんだ?今は授業中のはずだろ?」


眉を顰めるハーマイオニーとポカンとするロンに二人は笑った。



「「妹より大切な授業なんてこの世に存在するわけないだろ」」


二人はジュリアの横に行き、青白い顔色を心配そうに見ながらバラバラになった髪を震える手で掴んだ。



「あぁ、ジュリア…いつもの薔薇色の頬がまるで魚の腹みたいな色だ…」

「あんなに綺麗だった髪もこんなバラバラになっちゃって…」

「いったい何でこんな事に」


二人は側にいるドラコに気付き、眉間に皺を寄せた。


「おい、何でお前がいるんだ!」


怒鳴るフレッドにドラコは怯む事も無く淡々と答えた。

「…ジュリアがこうなったのは、僕を庇ったからだ…。僕が軽率な行動をして、ジュリアは…」


その言葉を聞き、二人はドラコに殴りかかろうとした。


が、それをハリーが止めた。


「避けろハリー」

「ジュリアをこんな目に合わせたのはソイツだ」

「一発殴んないと気が済まない」


ドラコを睨み付けながら怒鳴る二人をハリーは真っ直ぐ見つめた。


「…ジュリアは身を捨ててマルフォイを守ったんだ…。マルフォイを殴ればジュリアが悲しむ、それに…コイツには殴る価値もない」


あまりにも冷たく、静かなハリーの声が医務室に響いた。

その時、うっすらとジュリアの瞼が開いた。


裁かれない罪
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